2021 Fiscal Year Research-status Report
中枢型トリプトファン水酸化酵素のエクソン・スキップによる翻訳抑制解除と創薬
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19K22581
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
廣井 朋子 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 講師 (20238398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
那和 雪乃 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 助教 (10549786)
大滝 正訓 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (20612683)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | TPH2 / 翻訳抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
TPH2-mRNAは、エクソン1(E1)から翻訳が始まり、酵素部分はエクソン4から始まる。エクソン3(E3)の最後の1塩基を欠失させて翻訳フレームを合わせ、酵素部分をルシフェラーゼに置き換えてpCMV-scriptに挿入したクローンがこれまでに得られている。E1・エクソン2の前半の自己翻訳抑制ドメイン部分(E2R)・後半のACTドメイン部分(E2A)・E3を、様々に組み合わせたクローンを作成した。E1がないものには5'末端にコザック配列gccaccおよび翻訳開始のATGを付加した。これらをPC12細胞にトランスフェクションして発現させ、ルシフェラーゼアッセイにて発光を測定した。 その結果、E3のみでも強い抑制作用がみられ、CMVプロモーターによる発現が1/20程度に抑えられることが判明した。 以前の研究により、E1によって翻訳されるアミノ酸No.11~20に抑制作用があることが示唆されているが、E3による抑制作用は、E1のみによる抑制作用(1/4程度)よりも強かった。E2Aには、若干の抑制解消効果があるが、E2RおよびE2Aを除いてE1+E3としたもの(すなわちエクソン2スキップにより産生するもの)が、最も活性が低くなってしまうという結果となった。 E3のフレームをずらして、塩基配列は98%相同でアミノ酸配列は95%異なるものを作成したところ、E3に存在する強い抑制作用は、翻訳領域であるにも関わらず、塩基配列に由来するものであることが判明した。立体構造の予測モデリングも行って確認したが、ルシフェラーゼのN末端にTPH2のE3由来のアミノ酸61残基を付加しても、その構造によって活性に影響は出ないと考えられた。E3を約30塩基ごとに刻み、様々な組み合わせのクローンを作成しアッセイを行い、抑制作用のある配列をE3のうち88番-156番の69塩基に絞り込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はほぼ研究活動ができず、3年に延長したが、今年度末には当初目的とした「TPH2エクソン2のスキップ」を起こさせるESEアンチセンスオリゴを策定することができ、内在性に発現している細胞でのエクソン2スキップにも成功し、エクソン1+3となった場合の発現活性を測定できたたため、当初2年間での研究としていた研究計画は、ほぼ順調に進んだといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
ESEアンチセンスオリゴによりエクソン2をスキップさせると、発現はより下がることが確認され、翻訳領域であるエクソン3のの88番から156番塩基に強い抑制力のある塩基配列を発見した。本研究の最終目的は「TPH2の発現量増加」であるため、この配列による抑制作用を解明しなければ発現増加へつながらない。令和4年度も引き続き、エクソン3の抑制作用の解明に発展させて研究を継続する。 すなわち、この69塩基を様々な場所に挿入したクローンを作成し、その抑制効果が転写抑制なのか翻訳抑制なのかを測定するとともに、これまで作成した様々なエクソンの組み合わせのクローンから、この69塩基を取り除いたものを作成して、抑制が解除されるかどうかを確認する。また、この69塩基に結合する可能性のある因子をJASPAR 2020などの結合配列検索ソフトを用いて探索し、抑制効果との関連を考察する。
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Causes of Carryover |
当初目的としたTPH2エクソン2のスキップを起こさせるESEアンチセンスオリゴを策定することはでき、内在性に発現している細胞でのエクソンスキップにも成功した。しかし、「エクソン2を除去すると発現はより下がる」ことが確認され、エクソン3にこれまで未知であった、翻訳領域に存在する強い抑制塩基配列を発見した。本研究の最終目的は「TPH2の発現量増加」であるため、エクソン3の88番-156番塩基の配列に存在する抑制作用を解明しなければ発現増加へはつながらない。令和4年度も引き続き、エクソン3の抑制作用の解明に発展させて研究を継続したいため。 残額はわずかとなったが、プライマー合成および試薬など消耗品の購入のために使用する。
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Research Products
(1 results)