2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K22594
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
佐藤 康二 浜松医科大学, 医学部, 教授 (80235340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植木 孝俊 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (60317328)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | PET / 成体脳神経新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヒトでのPET(positron emission tomography)イメージングの実現を見据え、成体脳神経新生(adult neurogenesis)の動態をin vivoでリアルタイムに画像化するためのPETトレーサーを創製し、これまでに成体脳神経新生の障害が報告されているパーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、うつ病などの種々の精神神経疾患の早期診断技術、並びに、神経幹細胞(neural stem cell、以下NSCと略)を治療標的とする根治療法を創出することである。成体脳神経新生は、社会圧、環境ストレスへの脆弱性から、脳神経系の病態の初段階で障害を来す初期イベントであると考えられ、その障害動態の解析系は、特にこれまで診断マーカーが見出されていなかった統合失調症やうつ病などの精神疾患の早期診断の他、NSCを治療標的としたそれら疾患の治療薬創製にも有用である。 令和2年度では、CD133結合能により独自の受容体様タンパク質結合化合物ライブラリーからFCSを用いスクリーニングした複数のCD133高親和性化合物について、in vitro血液脳関門モデルの血管内皮細胞培養系を調製し、その血液脳関門透過性を評価した。次に、[11C]ポジトロン標識を施し、それをラット及びコモンマーモセットに注射投与した後にPETカメラで、脳内移行性や脳クリアランスなどの化合物分子特性を評価、解析した。ここでは、また、それらPETトレーサー候補化合物の神経毒性を、行動学的解析、MRIと脳スライスでの形態学的解析、脳脊髄液解析などにより評価し、薬剤安全性を検討した。一方、ラットと霊長類での薬物動態の差異にも着目し、PETトレーサー濃度の至適化、長期投与の影響評価を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
D133結合能により独自の受容体様タンパク質結合化合物ライブラリーからFCSを用いスクリーニングした複数のCD133高親和性化合物について、in vitro血液脳関門モデルの血管内皮細胞培養系を調製し、その血液脳関門透過性を評価することができたため。さらに、カニクイザル、アカゲザルなどのマカクサルでのPETによる薬物動態解析、神経毒性試験などを行い、将来のヒトでの臨床応用への可能性を検討することまでを、当初の計画通り行うことができたため。 これまで、パーキンソン病やハンチントン病等の神経変性疾患、並びに脳血管障害の病態と、成体脳に存するNSCとの関わりの詳細は不明であった。しかし最近、パーキンソン病の患者の剖検脳の解析から、罹患脳ではSVZのNSCが著明に減少していることが確認され、症状の進行や併発する痴呆症の病因に、成体脳における神経新生が関与していると考えられるようになった。こうした経緯を踏まえ、神経内科疾患におけるNSCの動態を探る機運が高まり、in vivoでNSCをイメージングする技術の開発が大いに俟たれていた。精神神経疾患、殊に症状が緩徐に進行する神経変性疾患において経時的にNSC或いは神経新生の動態をin vivoで観察することにより、疾患の病態とNSCとの関わりを緻密に解析することができると共に、神経内科疾患の治療に向けた新規のNSCをターゲットとする幹細胞治療の開発のための基礎的な知見が得られると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットとコモンマーモセットで母子分離や妊娠後期での母体へのpoly I:C投与による自閉症や統合失調症などの精神神経疾患病態モデルを作製する。ここではノベルティ試験やプレパルス抑制試験などの行動学的解析を行い、精神症状を定量的に評価する。また、併せて、MPTP(1-Mmethyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine)の腹腔反復投与によるラットとコモンマーモセットのパーキンソン病病態モデルを作製する。これら病態モデル動物に申請者らによる[11C]CD133 PETトレーサーを注射投与し、PETカメラを用い脳内NSC動態をin vivoで画像化する。そして経時的な成体脳神経新生障害の推移を観察し、その精神神経疾患病態生理との連関を解析する。 研究期間の終わりには、申請者らがNSCへの細胞増殖因子活性、神経細胞分化誘導因子活性などを指標にNSC培養系でスクリーニングした成体脳神経新生賦活剤で、in vitro血液脳関門モデルにおける透過性評価を行い、PETイメージングへの応用適正を確認したものを、上述した精神神経疾患病態モデルに投与するとともに、[11C]CD133 PETトレーサーでの成体脳神経新生動態のPETイメージングを行い、その動態と精神神経症状改善効果との連関を精査する。 本研究では、研究代表者の佐藤が化合物ライブラリーのスクリーニングなどのin vitro実験に携わり、植木が、脳組織や培養細胞の形態学的解析と病態モデルの作製、行動学的解析などの動物実験、PET/MRIイメージングを担当する。
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