2019 Fiscal Year Research-status Report
食欲促進性の求心性迷走神経の確立:食欲不振克服からフレイル・がん・うつ病態改善へ
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19K22611
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Research Institution | 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所) |
Principal Investigator |
矢田 俊彦 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所), 統合生理学研究センター統合生理学研究部, 部長 (60166527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 有作 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (60528420)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 食欲不振 / フレイル / 抗ガン剤 / 求心性迷走神経 / 弓状核 / Neuropeptide Y / グレリン / 人参養栄湯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食欲不振の改善により、サルコペニア・フレイルを改善する物質、方法の探索を目指し、その候補として求心性迷走神経を介して脳に作用する系の役割を確立し、物質を探索することを当初の目的とした。 まず、漢方薬の人参養栄湯が、抗ガン剤投与マウスの食欲不振を改善することを見出した。その作用ルートとしてまず求心性迷走神経を検討したが、顕著な作用が観察されなかった。本薬剤を構成する生薬の一部は血液脳関門を通過することが知られており、また、血液脳関門の脆弱な脳部位に作用する可能性も考えられるため、食欲中枢である視床下部弓状核への作用を調べたところ、Neuropeptide Y (NPY)ニューロンの細胞内Ca2+濃度を増加させ強力に活性化することを見出した。さらに、末梢由来の食欲亢進ホルモンであるグレリンに応答するNPYニューロンの細胞内Ca2+濃度を増加させることから、食欲促進中核路であるグレリンーNPY系を活性化することが明らかになった。加えて、人参養栄湯はグレリン非応答性NPYニューロンをも活性化することを見出した。これらの結果を学会及び論文で発表した。 一方、摂食促進作用が示唆されている食材成分Xが、弓状核ニューロンの細胞内Ca2+濃度を増加させることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漢方薬の人参養栄湯が、抗ガン剤投与マウスの食欲不振を改善することを見出した。その機序してまず求心性迷走神経を検討したが、顕著な作用が観察されなかった。そこで脳への作用を調べたところ、食欲中枢である視床下部弓状核のNeuropeptide Y (NPY)ニューロンを強力に活性化することを見出した。そこで、当初の求心性迷走神経を中心に解析する予定を、弓状核ニューロンを中心に解析する方向に切り替えて解析を進めた。その結果、人参養栄湯が、グレリン応答性NPYニューロンおよびグレリン非応答性NPYニューロンの2群を活性化することを見出した。一連の成果を複数の国際・国内学会及び学術論文で発表し、十分の成果を挙げた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)人参養栄湯による細胞内Ca2+濃度増加に関わるCa2+チャネルについて、グレリン応答性NPYニューロンvs.グレリン非応答性NPYニューロンを比較して解析する。(2)人参養栄湯のフレイル改善作用を検討するため、認知、不安に対する作用をマウス行動解析により解析する。(3)人参養栄湯が、高齢マウスの食欲不振を改善するか否かを検討する。 (4)摂食促進作用が示唆されている食材成分Xをマウスに投与して摂食が増加するか否かを検討する。成分Xが活性化する弓状核ニューロンの神経伝達物質を同定し、標的を明らかにする。さらに、食材成分Xが、求心性迷走神経を活性化するか否かを検討する。 (5)求心性迷走神経活動の評価系の感度を上げ、食欲促進系の求心性迷走神経の解析に備える。
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Causes of Carryover |
漢方薬の人参養栄湯が、抗ガン剤投与マウスの食欲不振を改善することを見出した。その作用ルートとしてまず求心性迷走神経を検討したが、顕著な作用が観察されなかったため、研究の一部遅れが生じた。そこで、人参養栄湯の別の作用標的を検討したところ、食欲中枢である視床下部弓状核のNeuropeptide Y (NPY)ニューロンの細胞内Ca2+濃度を増加させ強力に活性化することを見出した。今後その解析を深めるために、研究費の次年度使用額が生じた。 一方、求心性迷走神経の解析系の感度の上昇が必要となり、これを次年度に検討するために、研究費の次年度使用額が生じた。
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[Book] 標準生理学2019
Author(s)
矢田俊彦
Total Pages
1202
Publisher
医学書院
ISBN
978-4-260-03429-6
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[Book] 生化学2019
Author(s)
矢田俊彦、岩﨑有作
Total Pages
140
Publisher
公益社団法人 日本生化学会
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