2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K22614
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木戸 丈友 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任助教 (00401034)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 肝臓 / 実質細胞 / 非実質細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓は肝機能の本質を担う実質細胞(肝細胞)と非実質細胞(類洞内皮細胞、星細胞、クッパー細胞等)から構成され、生体の恒常性維持に寄与する臓器である。肝特有のマクロファージの一種であるクッパー細胞は、肝細胞への障害に応答し、星細胞を刺激し、活性化させる役割を担い、肝炎の進行を制御している。本研究ではヒトiPS細胞からクッパー細胞の分化誘導系を確立し、既に我々が樹立に成功している肝構成細胞と組み合わせることで、in vitro肝炎モデルの構築を行うことを目的とする。2019年度は、クッパー細胞の前駆細胞の性状について解析するため、マウス胎児肝臓を用いてフローサイトメトリー解析を行い、クッパー前駆細胞画分を同定した。また、フィーダーフリー培養系で増幅したヒトiPS細胞の胚葉体培養系を作製し、既報を参考にクッパー細胞の分化誘導を試みた。その結果、分化に伴い、iPS細胞の未分化マーカーであるOct4の発現は減少し、中胚葉マーカーであるMesp1, T, PDGFaの発現は増加し、CD34の発現も認められた。現在、マウス胎児肝臓で同定したクッパー前駆細胞の性状解析と各種のiPS細胞由来肝構成細胞を用いてクッパー細胞の分化誘導系の確立を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画であるクッパー前駆細胞の純化に有用なマーカー分子を同定し、iPS細胞からクッパー細胞の安定的な分化誘導系の確立に向けた基盤技術を開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
iPS細胞から安定的なクッパー細胞の分化誘導系を確立するため、クッパー前駆細胞の純化に有用なマーカー分子による細胞の分取と増幅培養系を検討する。また、胎児期肝構成細胞との相互作用がクッパー細胞の分化に重要であると考えられることから、作製した細胞とこれまでに作製に成功しているヒトiPS細胞由来の肝細胞、類洞内皮細胞、星細胞の三次元共培養系を樹立し、クッパー細胞への誘導を試みる。マクロファージマーカーの発現に加え、クッパー細胞の特異的なマーカーであるClec4f等の発現を遺伝子レベル、タンパク質レベルで解析し、クッパー細胞への分化を評価する。また、構築した肝組織内で、それぞれの肝構成細胞の局在を、免疫組織化学法により解析する。生体肝臓内でのクッパー細胞の局在と比較し、形態学的にクッパー細胞への分化を評価する。次に、作製した肝組織培養系に、四塩化炭素やアセトアミノフェンといった肝障害物質を添加し肝細胞を障害する。肝障害に応答し活性化するクッパー細胞から産生される炎症性サイトカインをELISA法によって定量し、肝炎モデルとして樹立する。さらに、星細胞の線維化マーカーである、aSMA, COL1A1, COL3A1の発現を解析し、培養系において、炎症の発症から線維化の過程の再現を試みる。
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Causes of Carryover |
当初の予定より、マウス胎児肝臓の解析を効率的に行うことができた。翌年度分と合わせた助成金については、iPS細胞から各種の肝構成細胞の分化誘導に必要なサイトカイン類等の購入に使用する。
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Research Products
(8 results)