2019 Fiscal Year Research-status Report
Developing alveolar organoid recapitulating injury-regeneration-imflammation-fibrosis
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19K22630
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森本 充 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (70544344)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 肺胞オルガノイド / 肺線維症 / 血管化デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性肺線維症(IPF)は肺胞の線維芽細胞が筋繊維化することで肺胞上皮細胞と毛細血管を介したガス交換の効率を下げる疾患であり、3年生存率が50%と大変予後が悪い。また本疾患は他臓器の線維症と同様、加齢に伴って増加することが知られており、超高齢化社会を迎える日本において今後より患者数が増加していくことが予想される。肺の繊維化は上皮の損傷-再生の慢性化に起因すると考えられ、線維化部位が肺胞領域であることから肺胞上皮細胞の障害が特に重要である。損傷後、正常に再生されれば炎症は収束に向かうが、継続的な損傷により炎症が慢性化すると過剰に増殖因子を受けた線維芽細胞が筋繊維芽細胞に分化し、組織の繊維化とコラーゲンの沈着を起こして線維症を発症する。本研究の目的は、肺胞オルガノイド培養法を改良し、肺線維症で起こる損傷―再生―炎症―線維化の一連のプロセスを試験管内で再現できる実験系を確立することである。 そのために、以下の4つの細胞種を抽出し、共培養する。 AT2 細胞(上皮)、PDGFRα陽性細胞(線維芽細胞、ニッチ細胞)、マクロファージ(免疫細胞)、HUVEC (血管内皮細胞) or マウス肺血管内皮である。本年度は特に AT2細胞、PDGFRα陽性細胞、HUVECもしくはマウス肺血管内皮を用いて、(1) 細胞塊血管化デバイスを使った肺胞オルガノイドの血管化 (2) in vitro の上皮損傷条件確立を試みた。 肺線維症の病理は大変複雑であり、現行のin vitro系は単純化しすぎてin vivoを反映することが難しかった。肺胞オルガノイドは複数の上皮、間充織細胞種が組織化したミニ臓器であり、in vivoに近いin vitroの実験系として有用である。本研究により新しいin vitroの肺線維症モデルが確立されれば、これまで行えなかった発症プロセスの検証や、細胞間の貢献度の定量的比較といった基礎研究が可能になり、将来的に新規ターゲットの探索や化合物スクリーニングへの応用も考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)京都大学横川博士から移管された血管化デバイス作成技術を用いて、研究室内で血管化デバイスを作成した。並行して、マウス肺から取り出したAT2細胞をマトリゲル中でPDGFRα陽性細胞と共培養を行い、肺胞オルガノイドを作成した。肺胞オルガノイドを血管化デバイスに埋め込んだ。デバイス上の別スロットに、HUVECもしくはマウス肺血管内皮を植え、デバイス上のスロットからすり抜けた内皮細胞が肺胞オルガノイドを血管化するかどうか検討した。結果的には内皮細胞がうまくキャピラリー化せず、オルガノイドに近づかなかった。血管化活性を高める工夫が必要であることがわかった。 (2)in vitro の上皮損傷モデルを作成するために、in vivoの損傷モデルでよく使用されるブレオマイシンを培養系に加え、肺胞オルガノイドに与える影響を検討した。予想通り、ブレオマイシン添加により、肺胞オルガノイドは成長を止め、濃度依存的にアポトーシスを起こすことが確認された。さらに、ブレオマイシンを除いて培養を継続すると、肺胞オルガノイドはまた細胞分裂を起こして成長する、すなわち再生現象を再現できることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で推進する予定の研究は次の4つ;(1) 肺胞オルガノイドの血管化、(2) in vitro の上皮損傷条件確立、(3)線維化の誘導と検出、(4)細胞ごとの線維化貢献度の定量化。今年度の研究成果により、(2)を達成することができた。来年度は(1)のさらなる改良と、(3)、(4)の達成を試みる。 (1)肺胞オルガノイドの血管化: オルガノイドを効率的に血管化するため、VEGF-Aが発現している肺間充織細胞を加えて、血管化を試みる。また血管化の効率を高めるため、横川博士が開発した新型デバイスを使用する予定。このデバイスでは、血管がオルガノイドの下層に張り巡らされ、従来型よりも内皮とオルガノイドが近接した状態になるため、血管化の効率が上がると考えられる。 (3)線維化の誘導と検出:線維化の元になる筋線維芽細胞はPDGFRα陽性細胞に由来する。PDGFRα陽性細胞を使って肺胞オルガノイドの培養と線維化誘導を行う。筋線維芽細胞は免疫染色を使って線維化を評価する。 (4)細胞ごとの線維化貢献度の定量化:損傷再生中の肺組織では、AT2細胞、マクロファージ、血管内皮細胞が相互作用をしながら最終的にTgfβやPDGF-Aを分泌するようになる。培養系でこれら3細胞種を増減させ、線維化を誘導、定量することで、個々の分子に囚われず、細胞レベルで貢献度の高さやシステムとしての上流下流関係を明らかにする
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Causes of Carryover |
研究は概ね順調に進んでいるが、血管化デバイスについては来年度の開発に注力を注ぐことになったため、予算を残すことにした。また今年予定していたPDGFRα陽性細胞線維化実験について、適切な細胞量と融合させる細胞塊形態についての検討に予想よりも時間を要した。小スケールで実験することが多かったこと、また来年度も条件系統を継続するために予算を来年度に使用することにした。
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Research Products
(3 results)