2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K22635
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三宅 健介 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60229812)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
Keywords | Toll様受容体 / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
TLR7の構造生物学的解析より、TLR7はヌクレオシドに結合し、活性化されることが明らかになった。ヌクレオシドは核酸の分解産物であり、細菌感染やウイルス感染ばかりでなく、組織損傷においてもヌクレオシドがリソソームに蓄積し、TLR7を活性化する可能性がある。このヌクレオシドに対して、TLR7がどのような応答を個体レベルで誘導するのか、本研究において検討する。具体的にはヌクレオシドトランスポーターを欠損させることで、ヌクレオシドを細胞内に蓄積させ、その結果として、どのような応答が認められるのかについて検討する。実際にトランスポーターの遺伝子改変マウスを作成し、そこにおいて認められる単球・マクロファージの増加について、FACS解析などで検討した。さらに認められた表現型の中で、どれがTLR7依存性であるのかを明らかにするために、TLR7遺伝子改変マウスとの交配を進め、2重欠損マウスを作成した。その結果、単球・マクロファージの増加はTLR7依存性であることが明らかとなった。現在、このメカニズムの解析を進めるために細胞株での解析系の確立を進めている。 ヒトについては、TLR7、TLR8の両方がヌクレオシドに応答する。そこで、単球・マクロファージの増加が認められるヒスチオサイトーシスなどの疾患について、末梢血細胞の解析を進めた。すでに我々はいくつかの症例においてFACS解析を行い、健常者と比べて、どの単球・マクロファージが多いのか、またTLR7、TLR8の発現の変化などについて検討した。また、ビトロで末梢血細胞を培養し、生存・増殖を検討した。まだ症例数が少ないために、結論は得られていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの解析については、ヌクレオシドトランスポーター欠損マウスの作成が予定通りに終了し、TLR7との2重欠損マウス作成のための交配もすでに終了している。どちらのマウスについても、表現型の解析は順調に進んでおり、TLR7依存性の表現型についての知見が得られつつある。これらの個体レベルでの解析で得られた、TLR7のヌクレオシドに対する応答についての知見を説明し得る分子基盤解明も並行して進めてゆく必要がある。現在は、その解析のために必要な細胞株の作成を進めている。 一方、ヒトの解析については、すでにいくつかのヒスチオサイトーシスの症例について、末梢血のFACS解析、インビトロでの培養などを行った。ヒトの場合は個体差が大きく、結果の解釈に慎重にならざるを得ないために、予想よりはさらに時間がかかることが分かった。また、末梢血だけでは、得られる知見に限りがあるために、他の検体を得られないかどうか、今後共同研究者と検討する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き研究計画に従ってマウスの解析を進めてゆく。とくに細胞株による分子基盤解明の試みで、TLR7のヌクレオシドに対する応答に、新たな分子の関与が示された場合に、その分子の役割を細胞株だけでなく、個体レベルで検討する必要がある。そこで、その分子の遺伝子改変マウスを作成し、ヌクレオシドトランスポーターとの2重欠損マウスを作成する。TLR7依存性の表現型にその分子が関与しているかどうか、2重欠損マウスの表現型解析を進めることで、検討する。ヒトの解析については、引き続き、ヒトの検体を用いた解析を進める。また、できれば末梢血だけでなく、骨髄など、他の検体の解析が可能かどうか、検討する。さらにこれらの解析と並行して、上述のマウスと同様な細胞株を用いた解析をヒトTLR7、TLR8についても進めてゆく。具体的には、IL-3依存性に増殖するBa/F3細胞にヒトTLR7、TLR8を発現させ、ヌクレオシドに対する応答について検討する。今までに得られたマウスTLR7についての知見を参考にしながら進めてゆく。この解析を通して、ヒトTLR7とヒトTLR8の違いが明らかになることが期待される。さらに、マウスの解析で、新たな分子の関与が疑われたときに、ヒトTLR7、TLR8においてどうなのか、細胞株を用いて検討する。さらにヒトの検体の解析の際にその分子の発現などについても検討する。また、ヒトのヒスチオサイトーシスで認められているBRAF-V600Eという変異がTLR7、TLR8のヌクレオシドに対する応答に関与するかどうか、検討する。ヒトTLR7、TLR8を発現させた細胞株にBRAF-V600Eを発現させ、ヌクレオシドに対する応答が影響されるかどうか、検討する。もし、TLR7、TLR8の応答に関与するようであれば、ヒトの検体の解析の際にBRAF-V600Eの発現を特異的な抗体で検討する。
|
Research Products
(7 results)