2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K22637
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小川 渉 神戸大学, 医学研究科, 教授 (40294219)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | サルコペニア / 糖尿病 / 不動化 / KLF15 |
Outline of Annual Research Achievements |
身体不動化や糖尿病はサルコペニアの進展要因であるが、これらの要因がどのようなメカニズムで筋肉量の現象を引き起こすかは明らかではない。本研究では、筋量制御におけるWWP1-KLF15経路の役割について詳細な解析を行うことを目的とする。 ユビキチンリガーゼWWP1は高血糖状態ではその発現が低下し、その結果、KLF15のタンパク分解が抑制されて、その発現量が増加し、筋萎縮のスイッチとなることが明らかとなっている。p38MAPKの薬理学的阻害剤の投与やsiRNAを用いてp38MAPKの発現量を減少はC2C12培養筋筒細胞において、高血糖によるWWP1の発現抑制を阻害した。このおとから、高血糖によるWWP1の発現抑制にはp38MAPK経路が関与すると考えられた。 また筋の不動化の際には、KLF15の遺伝子発現が増強して筋萎縮のスイッチとなる。不動化によるKLF15の遺伝子発現のメカニズムを検討した結果、KLF15のプロモーター領域には転写因子C/EBPファミリーの結合部位があることを確認した。筋不動化の際には、C/EBPファミリーの中でC/EBPβとC/EBPδの発現が増強していた。C2C12培養筋筒細胞にC/EBPβまたはC/EBPδを強制発現すると、KLF15のプロモーター活性が増強した。また、siRNAを用いてC/EBPβまたはC/EBPδの発現を抑制すると、KLF15の遺伝子発現は低下した。以上から、不動化時にはC/EBPβ及びC/EBPδの発現が増強し、これらの転写因子の作用によりKLF15の遺伝子発現が活性化し、筋萎縮が促されると考えられた。 さらに、不動化性筋萎縮患者及び対象患者の骨格筋生検試料を用いて遺伝子発現解析を行った。その結果、KLF15やWWP1、C/EBPβ、C/EBPδの発現変化など、不動化モデルマウスの骨格筋で見られたのと同様な遺伝子発現の変化を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病状態におけるWWP1の発現抑制に関わる情報伝達経路、不動化によるKLF15の発現増加に関わる経路ともに、p38MAPK及びC/EBPβ及びC/EBPδという、新たな分子経路を同定した点で、本計画は当初の計画通り順調に進捗しているとえる。また、ヒト試料を用いて、マウスの検討で明らかになった分子、経路の妥当性も一定程度、検証できた。この点でも本計画は順調に進捗していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は不動化性筋萎縮のメカニズムの解明に向け、C/EBPβ及びC/EBPδのさらに上流の制御因子の探索を行う。また、KLF15の下流で機能し、筋萎縮へのシグナルを媒介する因子の探索も行う。具体的には野生型マウスを不動化処理、未処理、また骨格筋特異的KLF15欠損マウスの不動化処理、未処理の条件の骨格筋試料のマイクロアレイ解析や動化性筋萎縮患者及び対象患者の骨格筋生検試料での遺伝子発現変化の解析から候補因子の抽出を行う。
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Causes of Carryover |
当初の予定より、マウス実験が早期に進捗したため、飼育などに関わる経費が当初の予定より少なかったため。
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Research Products
(2 results)