2019 Fiscal Year Research-status Report
マルチオミクス解析による胃癌周術期化学療法の奏効度予測バイオマーカーの探索的研究
Project/Area Number |
19K22653
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小寺 泰弘 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10345879)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神田 光郎 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (00644668)
小林 大介 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (30635595) [Withdrawn]
田中 千恵 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (50589786)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 胃癌 / 周術期 / 化学療法 / マルチオミクス解析 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
術後補助化学療法が確立された今も、Stage IIIA、IIIB(胃癌取扱い規約第13版)胃癌の5年生存割合がそれぞれ67%、50%と依然として予後不良であり、更なる治療開発が求められている。術前化学療法は、術前に施行するため化学療法のコンプライアンスが良い、微小転移に対して早期から化学療法が行える、などの理由から、予後不良な進行胃癌に対して有効性が期待されており、JCOG1509はStage III胃癌に対する術前SOX療法の上乗せ効果を検証する第3相試験であり、現在症例登録中である。 胃癌に対する化学療法の効果予測因子を同定することは、個々人に応じたテーラーメイド治療を確立していく上で大きな意義がある。そこで主として術前SOX療法の効果予測バイオマーカー同定を目的としたJCOG1509附随研究を立案し、本体研究に並行して試料のバンキングを開始した。将来の試料解析研究では、治療前血液検体を対象とした血漿中タンパク/microRNAの解析、主に術前生検組織FFPE検体を対象とした癌パネル解析、手術標本から得る凍結組織およびFFPE検体を対象に組織中タンパク/microRNAの解析を包括的に行うことで術前SOX療法の奏効度と相関する遺伝子学的バイオマーカーを同定する。本研究の目的は、将来の試料解析研究の意義を最大限とし胃癌診療を飛躍的に発展させるために、血漿中タンパク/microRNA解析における独自候補マーカーの選定と、生検検体での癌パネル解析の実施可能性を検討することである。本年度は、研究計画どおりに血漿検体でのプロテオーム解析を完了し、術前生検検体からの癌パネル解析が実施可能かについての事前検討を順調に進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
適格症例の血漿検体、術前生検検体、手術検体からの凍結組織、手術標本FFPE検体を収集し、解析に用いた。血液検体は非侵襲的かつ反復して採取可能であり、これを用いた治療前の効果予測バイオマーカーが同定されることが理想的である。JCOG1509附随研究で解析対象とする血液中バイオマーカー候補タンパクを探索するため、名古屋大学医学部附属病院で術前FU系+プラチナ系化学療法を施行した胃癌のうち、病理学的奏効度を基準に術前化学療法著効例4例と無効例4例から得た治療前の血漿検体を対象にプロテオーム解析を行った。これにより9つの化学療法抵抗性マーカー候補タンパクを抽出した。次世代シークエンサーを用いた遺伝子変異検査CANCERPLEX(デンカ社)は、厳選された435遺伝子のゲノム情報を解析する癌パネルであり、マイクロサテライト不安定性やTumor mutation burdenも解析可能である。患者固有の胃癌ゲノムの状態を評価するために理想的な検体は治療前内視鏡的生検によって得られる癌組織であるが、FFPE保存によるDNA損傷や検体量不足がCANCERPLEX実施において不利な要素となりうる。そこで、内視鏡下生検で得た胃癌組織のFFPE検体を対象にCANCERPLEXの実施に適するDNAの抽出が可能であることを確認する事前検討を実施している。すでに予定の50検体のうち39検体の解析を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、予定に沿った研究計画を遂行する。治療前血漿検体を対象にしたmicroRNA-sequencing:microRNAは癌由来の異常を比較的安定的に循環血液中に反映するとされ、血液中バイオマーカー解析の標的に適している。名古屋大学医学部附属病院で術前FU系+プラチナ系化学療法を施行した胃癌のうち、病理学的奏効度を基準に術前化学療法著効例4例と無効例4例から得た治療前の血漿検体を対象にmicroRNA array解析を行い、術前化学療法奏効度に相関するmicroRNAを抽出する。内視鏡下生検で得た胃癌組織のFFPE検体を対象にしたがんパネル解析CANCERPLEXを予定の50検体まで実施し、生検検体から得られるDNAでの実施性を分析する。同時に、得られたゲノムデータから術前化学療法の耐性に影響しうる遺伝子異常を探索する。治療前の血漿を用いた術前化学療法の効果予測バイオマーカー探索と同じ対象の切除胃癌組織中で、候補バイオマーカーの組織中発現度を免疫組織化学染色法や定量的PCR法で調べる。これにより、それらが腫瘍組織から発生しているかについての知見を得る。
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Causes of Carryover |
検体処理に必要な消耗品費に未使用分が生じたが、次年度に実施するバイオマーカー解析での蛋白、核酸抽出、薄切切片作成に使用する予定である。
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