2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of drug delivery system using nano-micelle carrier targeting placenta complicated with preeclampsia
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19K22678
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 知行 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (40209010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永松 健 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60463858)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / 妊娠 / 胎盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、血管内皮保護作用、抗凝固作用を有する生理的蛋白質トロンボモジュリン(TM)のPEG化により胎盤集積性を高めるとともにTM以外の治療薬剤も結合できる薬剤キャリアを作成し、胎盤を標的臓器としたドラッグデリバリーシステムを確立することを目的とする。今年度はPEG化TMキャリアの作成と妊娠マウスにおける胎盤通過性・臓器集積性についての検討を開始した。異なるPEG化フレームを有するTM結合キャリアを作成して、蛍光標識を施した状態で妊娠マウスに投与を行い、母体、胎盤、胎仔へのそれぞれの分布を検討した。その結果、胎仔への移行がなくかつ胎盤集積性の高いPEG化TMの至適条件の決定を行うことが出来た。特に、TM単独の投与と比較して、PEG化することによって胎盤での集積性が高まるという知見が得られたことは注目すべき点である。PEG化TMを薬剤キャリアをして用いることで、薬剤単独の投与よりも少ない投与量で効果を発揮する、胎盤を標的臓器とした新たなドラッグデリバリーシステムの可能性につながると考えている。薬剤の投与量を減らすこととができれば、母体・胎児への副作用の軽減が期待できる。我々の過去の検討ではアンジオテンシン誘発性妊娠高血圧腎症(PE)マウスモデルにおいてTMがPE発症抑制効果を発揮することを確認している。そこで、今後は、まずこのPEマウスモデルに対するPEG化TMの効果の検証を行い、またヒト胎盤を用いたex vivoでの胎盤灌流モデルによりPEG化キャリアのヒトでの胎盤通過性の確認も進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初①PEG化TMキャリアの作成と妊娠マウスにおける胎盤通過性・臓器集積性、② ex vivo胎盤灌流モデルによるキャリアのヒト胎盤通過性と局所分布、③妊娠高血圧腎症(PE)マウスモデルにおける治療効果の3つの課題を設定した。昨年度は①の課題を中心に検討を進めて、妊娠マウスへの投与における胎盤通過性・臓器集積性を解析することでPEG化TMキャリアの至適条件を決定することができた。今後は課題②、③について検討を行う予定である。研究の進捗についてはおおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度確立したマウス胎仔への移行性の少ないPEG化TMキャリアについて、ヒト胎盤を用いたPEG化TMキャリアの胎盤通過性、胎盤集積部位を確認する。我々の研究室で以前から実施している、妊娠末期のヒト胎盤を用いたex vivo評価法において検証を進める予定である。また、皮下埋め込みポンプによるアンジオテンシン投与により妊娠高血圧腎症を誘導するマウスモデルを用いて、PEG化TMキャリアにより高血圧、蛋白尿、胎児発育不全などの妊娠高血圧腎症に伴う症状への改善効果を検証する。PEG化TMは胎盤集積性が高いことを確認しているため、胎盤機能障害に起因したさまざまな周産期疾患への応用も期待できる。そこで、このキャリアにTMに加えての他の薬剤を追加結合させた場合のキャリア分布の動態変化についても確認することで、妊娠高血圧腎症以外の疾患への利用を見据えた知見を得たいと考えている。
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