2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of an ultra-high-speed brain scanner for comprehensive imaging of the entire human brain
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19K22696
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
八田 稔久 金沢医科大学, 医学部, 教授 (20238025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 健策 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (10293664)
松原 孝宜 金沢医科大学, 医学部, 協力研究員 (30727649)
坂田 ひろみ 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (50294666)
塚田 剛史 金沢医科大学, 医学部, 助教 (90647108)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 脳 / イメージング / スキャナ / 透明化 / ヒト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヒトの脳全体を、シナプスレベルの解像度かつ多チャンネル蛍光で高速スキャニングするための統合的プラットフォームを確立することである。主となるハードウエアとして、超高速イメージング装置Cell Voyager 7000 (CV7000・横河電機)を改造し、ヒト大脳前額断面半側全面をカバーする超広視野高速3Dスキャナの開発を行う。更に、独自に開発した迅速組織透明化技術をこのシステムに最適化したプロトコルの確立を目指す。これにより、ヒト大脳前額断面の半側の厚切りスライスをシナプスレベルの解像度を保ちながら、短時間でスキャニングが完了する。ヒト大脳の全貌を記述することが可能なブレインスキャナにより、一個の神経細胞の脳全域にわたる広がりと連絡を俯瞰的レベルから微細構築までを自由にズームアウト・ズームインすることが可能なイメージング・システムの構築を目指す。 2020年度は、初年度に製作を開始したヒト大脳半側全面スライスを保持し、スキャンするための、専用スライドアダプタの評価を継続して行った。その結果、透明化メディウムに浸漬した状態で標本面を下側にして保持・撮影することが困難であることが判明した。この問題を克服するために、様々なスライドマウント方法を考案し、評価を行ったが、標本マウントの安定性、撮影の質、撮影効率をいずれも満たす最適な解を見いだすには至っていない。 マウス脳に関しては、数切片に分割した透明化された脳全体を連続でスキャンできることが確認でき、各種染色を用いた解析に運用可能である。一方、ヒト脳の透明化に関しては、初年度の検討で、マウスあるいはラットに比較して、非常に透明化しにくいことを明らかにした。我々が見出した組織透明化作用がある薬剤を用いて、継続して検討を行っているが、未だ最適なプロトコルを見い出せていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度に、ヒト脳全域をカバーする専用のスライドアダプタを2種類作成し評価した。3Dプリンタによる樹脂製アダプタは、工作精度が低く自動撮影には適していなかった。このため、金属製の精密なアダプタをベースとして、標本のマウント方法について検討を行った。CV7000は倒立型顕微鏡を基本とするため、撮影面が下面となる。このため、大型ガラスに脳標本を添付し、透明化メディウムに浸漬した状態で標本面を下側にして保持することが困難であることが判明した。これを回避するために、ウエルプレートサイズのチャンバーに底面に大型カバーガラスを貼り付ける方法を検討したが、支点がない状態で底面を保持するため、たわみによる平滑度の低下が回避できず、自動撮影において障害となることが予想された。この問題を克服するために、カバーガラスと同材質の高屈折率性ガラス素材を用いた厚い底面用ガラスを作成し性能について検討を始めた。また、透明化メディウムを固化することで、標本を固相で観察する方法について検討を行っているが、最適なプロトコルを見いだすには至っていない。 これまで経験したことの無いコロナ禍において、教育と研究の両立が非常に困難となり、研究の遂行に困難をきたすことが少なくなかった。具体的には、スライドアダプタの新規作製は専門業者への外注となるが、現物を前にしての綿密な打ち合わせを行うことが全くできない状況であった。そのため、初年度作製したものを改良して、問題点を突き詰めてゆくアプローチを取らざるを得なかった。また、透明化メディウムの固相化についても同様であり、関連化学薬品メーカーの協力を仰ぐには至らなかった。このため、研究の進捗状況は、遅れていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
【スライドアダプタおよび新規スライドフォーマットの開発】透明化した標本を最終的に高屈折率性マウントに浸漬し、それをスライドガラス状に保定することが出来る形状のガラスおよびアダプタの組み合わせを考案する必要がある。これを可能とするアダプタのデザインを製作企業と打ち合わせのうえ開発を進める。さらに、標本の保存性や、撮影の安定性に優れる固相化透明化マウント液の開発について、樹脂メーカーの協力を仰ぎ検討を進める。 【ヒト脳の脱色・透明化処理法の確立】RAP法およびその改変法によって、マウス脳の脱色・透明化は容易に達成されるが、ヒトホルマリン固定脳では、非常に困難であることが初年度の検討により明らかとなった。これまでのところ、ヒト脳の迅速な透明化処理を可能とする方法を見いだせていない。しかしながら、現在検討している透明化プロトコルを用いて、数100μm程度の厚さのスライスであれば深部観察は可能である。ミリメートルのオーダーの厚いスライスの透明化プロトコルの探索と並行して、既存の方法に立脚したアプローチについても検討を進める。 【高屈折率性マウント剤の開発】既存の高屈折率性溶媒のほとんどで、DAPIなどの蛍光核染色液を使用することが出来ない。これまでの研究によって、核染色が保持される条件(pH, 溶媒の種類と濃度など)が一部判明した。核染色性を保つことが可能な透明化マウント剤の開発を急ぐ。 【取得画像の外部公開】本研究で得られた膨大な脳組織画像を、各種教育機関等からでも一般利用できるようにする。具体的には、バーチャルスライドビューワ機能を有するZoomifyまたはOpenSeadragon等のアプリケーションを活用し、外部公開を目指す。
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Causes of Carryover |
初年度の研究によって、スライドアダプタの問題点を克服できるような形状のアダプタを考案して、新たな試作品の発注・製作を予定していたが、年度内に遂行することが出来なかった。その理由として、初年度末からのCOVID-19感染が更に拡大し、学務に割く時間が大幅に増加したこと、移動制限によって製作業者との現物合わせをしながら、試作品を開発することが出来なかった。しかし、現有する試作品を用いて出来得る限りのトライアルを行った結果、改善すべき問題点はほぼ明らかになったと考えている。次年度、コロナ拡大状況を勘案しながら、改良型アダプタの作製と性能評価を実施する予定である。
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Research Products
(13 results)