2019 Fiscal Year Research-status Report
Therapeutic biofilmによる歯周病・根面う蝕治療アプローチの転換
Project/Area Number |
19K22705
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
多部田 康一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (20401763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野中 由香莉 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40710520)
寺尾 豊 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50397717)
藤本 啓二 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70229045)
高橋 直紀 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (80722842)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | リポナノカプセル / バイオフィルム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,歯周・う蝕治療の基本概念である『バイオフィルムの徹底排除』から『Therapeutic biofilmの作為的形成』へと発想を逆転することにより,歯周病および根面う蝕の発症・進行の制御に挑戦する。両疾病の原因となる細菌プラークはバイオフィルムとして薬剤抵抗性を持ち, 治療においては機械的除去が必要である。しかしセルフケア困難な部位にバイオフィルムを作らせないことは不可能であり,既存の治療法は限界に至ったと考える。そこで,本研究は既存概念を転換して,Therapeutic biofilmの概念創生に向けた探索を行う挑戦的研究である。 In vitro におけるTherapeutic biofilmの創製および機能評価を目標とし,その予備実験として,キトサン被覆リポソームを用い,歯周病原細菌由来バイオフィルムへの影響を検討した。代表的な歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis, Fusobacterium nucleatum の培養液に上記リポソームを添加し,バイオフィルム形成に対する抑制効果を検討した。バイオフィルム形成量の評価にはクリスタルバイオレット染色を用いた。 その結果,キトサン被覆リポソームを高濃度で添加するといずれの菌においてもバイオフィルム形成が一定量抑制される可能性が示唆された。すなわち,抗菌物質未含有のリポナノカプセルによっても,菌叢の変化が生じる可能性が示された。これらの抑制メカニズムについては今後更なる検討が必要である。また、口腔内の常在菌を含めた各種細菌に対する影響について今後解析を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の成果から,歯周病原細菌由来バイオフィルムに対してキトサン被覆リポソームが与える影響について明らかとなった。 しかし,このバイオフィルム形成阻害メカニズムを明らかとするため,蛍光物質含有リポソームの崩壊速度の検討を行ったが,菌と共培養するという実験条件に適したリポソームの調整が難航し,現在再実験を実施中である。 また,口腔バイオフィルムの初期定着菌であるStreptococcus mitis,Streptococcus oralis 等へのリポソームが与える影響についての実験もまた進行中である。 次年度はこれらの進行中の実験について一定の成果が得られること,それによりTherapeutic biofilmとしての性質を有する,リポナノカプセルを含有したバイオフィルムの形成を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,上記のように,初期定着菌へリポソームが与える影響について明らかとし,Therapeutic Biofilmの創製に必要なリポナノカプセルの条件について,より詳細に調整を加えていく予定である。 その過程において,蛍光物質含有リポソームを用いて,細菌培養下におけるリポソームの崩壊速度についても引き続き検証を行っていく。 さらに,キトサン被覆だけでなく,リン酸カルシウム放出ナノカプセルや,すでに抗菌作用について明らかとしているコメペプチド含有ナノカプセルも用いた検証を行う。Symbiosis環境(為害性の少ない細菌叢)を作りうる、Therapeutic Biofilmとしての性質を有するバイオフィルムの形成が可能かどうかについて更なる検証を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
実験に適したリポナノカプセルの調整が難航し、当初の計画から研究に遅れが生じたため。また、新型コロナウイルス感染症の影響で当初予定していた学会参加への旅費が生じなかったため。
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