2019 Fiscal Year Research-status Report
p53欠損腫瘍発症にエッセンシャルなゲノム上の特定配列
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19K22724
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
伊藤 公成 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (00332726)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | p53 / Runx / c-Myc / リンパ腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨肉腫発症の分子メカニズムを解析した結果、骨肉腫発症の分子基盤は「p53の遺伝子異常に伴う、Runx3によるc-Mycの過剰誘導」であることが判明した。さらに、Runx3によるMycの過剰誘導に必須なRunx結合配列「mR1」を、ゲノム上の特定位置において同定した。mR1を破壊したマウスにおいて、骨肉腫の発症が顕著に抑制された。 p53の遺伝子異常は、ほぼすべてのヒトがんにおいて高頻度に観察される。実際、p53欠損マウスは、骨肉腫のほかに胸腺リンパ腫を好発する。よって、p53の不活化とMycの過剰発現をRunx3がmR1を通して仲介するという骨肉腫発症の分子基盤は、さまざまな腫瘍の発症に広く通底するものと考えた。 その可能性を検証するため、p53欠損性の胸腺リンパ腫モデルを新たに導入した。これまでの観察では、mR1を破壊したマウスにおいて胸腺リンパ腫の発症が顕著に抑制されている。 mR1を介したRunxによるMycの発現誘導は、p53欠損性の腫瘍の発症機序における、がん種を越えた共通の分子基盤であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
リンパ腫のモデルマウスであるリンパ球特異的p53遺伝子欠損マウス;LPマウス(Lck-Cre; p53flox/floxマウス)を新たに導入した。LPマウスは、全身性p53遺伝子欠損マウスと同様、半年弱で主に胸腺リンパ腫を発症して死亡する。その胸腺リンパ腫組織を調べたところ、Runx1、Runx3およびMycの顕著な発現量増加がみられた。そこで、LPマウスからそれぞれの遺伝子を欠損すると、Runx1あるいはMycのヘテロ欠損によって顕著な延命効果がみられた。その結果を受けて、骨肉腫を解析したときと同様に、mR1の破壊によってLPマウスを延命させることができるかどうかを検討した。現在観察中であるが、これまでのところ有意な延命効果が観察されている。これらの観察実施までに要した時間は、当初の計画(想定)よりも短かった。
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Strategy for Future Research Activity |
LPマウスの胸腺リンパ腫では、Runx1、Runx3およびMycの顕著な発現量増加がみられ、それぞれの遺伝子を欠損すると、Runx1あるいはMycのヘテロ欠損によって顕著な延命効果がみられた。さらに、mR1の破壊もLPマウスを延命させている。これからの結果から、胸腺リンパ腫の発症機序は、「p53非存在下でのRunx1によるmR1を介したMycの過剰誘導」であることが示唆される。今後はLPマウスから樹立した胸腺リンパ腫細胞を用いて、Runx1によるmR1を介したMycの誘導の分子機序の詳細を、in vitroで分子生物学的・生化学的に解析する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年1月に受託した解析が、その後の新型コロナウイルス禍により滞り、解析結果が2020年4月以降に納品されることになったため。次年度使用額は、その経費にあてる予定である。
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