2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K22725
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
片桐 岳信 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80245802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
自見 英治郎 九州大学, 歯学研究院, 教授 (40276598)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 歯 / 上皮細胞 / 分化 / 細胞内シグナル / 大腸 |
Outline of Annual Research Achievements |
TGF-beta ファミリーは、歯や毛の形成における上皮間葉相互作用を司る重要な成長因子の1つとして知られる。我々はTGF-beta ファミリーの成体における役割を解析するために、転写共役因子Smad4の遺伝子を欠失した新しいSmad4コンディショナル・ノックアウトマウス(Smad4 cKO)を樹立した。Smad4は、TGF-betaファミリーのSmad依存的な細胞内シグナル伝達に必須の共役因子と考えられている。Smad4を胎生期にノックアウトすると致死性となるため、離乳後の性成熟したマウスにタモキシフェンを投与して、遺伝子改変(Smad4ノックアウト)を誘導した。タモキシフェン投与後約1カ月後に下顎切歯を摘出し石灰化度を解析したが、コントロール群とSmad4 cKO群の間に差は認められなかった。一方、摘出した切歯を組織学的に解析すると、Smad4 cKOマウスにおいてエナメル芽細胞を含む上皮細胞の形態異常や形成不全が認められた。さらに、Smad4 cKOマウスにおける歯の上皮細胞では、エナメル質の石灰化に重要なアルカリホスファターゼの発現や、鉄の沈着が著しく低下していた。これらの結果より、Smad4を介したTGF-betaファミリーのシグナルは、性成熟したマウスの切歯における上皮細胞の正常な分化の機能発現に重要な役割を果たすことが明らかとなった。本研究で解析したSmad4 cKOマウスは、貧血を呈して死亡した。この原因を解析すると、大腸の上皮細胞の形成不全が認められた。これらの結果から、Smad4依存的なシグナルは、切歯のみならずさまざまな上皮細胞の増殖や分化に重要である可能性が示された。
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