2020 Fiscal Year Research-status Report
DNA損傷に関わる年齢依存性発現分子の機能解析―法医学から老化医学への展開
Project/Area Number |
19K22754
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
飯田 礼子 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (40139788)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | ホスホジエステラーゼ / グルコース耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、M-LP遺伝子を個体レベルおよび細胞レベルにおいて欠損させ、それぞれ正常個体や野生型細胞と比較検討しM-LPの機能を解明することを目指している。 今年度は2019年度に作製したM-LP-KOマウスについて病理組織学的および分子生物学的解析を実施し、以下のような成果を得た。 1.M-LP-KOマウスは、少なくとも1年以上生存し、外表上の明らかな形態異常は認められなかった。また、生後200日までの体重の分布に野生型マウスとの相違は認められなかった。脳、心、肝、膵、腎、肺など、主要な臓器について病理組織学的解析を行ったところ、膵以外の臓器には明らかな異常が認められなかった。一方、M-LP-KOマウス膵では、ランゲルハンス島の過形成が認められた。抗インスリン抗体および抗グルカゴン抗体を用いた免疫蛍光染色により、過形成の原因はβ細胞数の増加であることが示された。 2.ランゲルハンス島の過形成がグルコース耐性に及ぼす効果を調べるため、腹腔内ブドウ糖負荷試験を実施した。野生型マウスとKOマウスの空腹時血糖値に差は認められなかったが、ブドウ糖投与後の血糖値はKOマウスで大きく低下した。続いて、膵より単離したランゲルハンス島のグルコース応答性インスリン分泌を解析したところ、KOによりインスリン分泌能が大きく増加することが明らかとなった。これらの結果から、KOマウスで観察されたグルコース耐性能の改善は、β細胞数の増加およびβ細胞のインスリン分泌能の上昇によるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
M-LP遺伝子が致死遺伝子でなかったため、KOマウスを支障なく作製することができた。また、表現型が同定され機能の解明に向けた大きな一歩となった。
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Strategy for Future Research Activity |
KOマウスにおいて膵ランゲルハンス島の過形成が認められたことから、M-LP-KOが過形成を引き起こす分子メカニズムを解明するため以下の実験を実施する。 1.ラット膵臓細胞 (INS-1 832/13)による実験 M-LP siRNA を用いたM-LP-ノックダウン(KD)の条件検討を行ったのち、M-LP-KD INS-1 832/13細胞と対照細胞 (control siRNAを導入したINS-1 832/13細胞) よりそれぞれ抽出したmRNAについて、細胞増殖、膵β細胞機能維持、cAMP/PKAシグナル伝達経路などに関わる遺伝子の発現解析を実施する。同様に、M-LP-KD INS-1 832/13細胞と対照細胞から細胞分画法によって細胞質タンパク質および核タンパク質を抽出し、ウエスタンブロット法を用いてcAMP/PKAシグナル伝達経路に関わるタンパク質の量的変化やリン酸化状態を解析する。 2.マウス膵におけるM-LPの年齢依存性発現の解析 M-LPは当初年齢依存性発現生体分子として発見された分子であるが、膵における発現パターンはわかっていない。そこで、年齢別に採取した膵よりmRNAを抽出し、M-LPの発現量の解析を実施する。
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Causes of Carryover |
概ね予定通りであったが、試薬の購入にキャンペ-ンを利用したため、少額の剰余金が生じた。次年度は当初の計画通り、研究を実施する。
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Research Products
(2 results)