2020 Fiscal Year Annual Research Report
ジェネオロジー理論を発展させた全ゲノム情報による多人数同時身元確認法の開発
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19K22758
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
玉木 敬二 京都大学, 医学研究科, 教授 (90217175)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | DNA / 血縁鑑定 / 一塩基多型 / SNPs / ICS |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで血縁鑑定法のソフトウェアは有償無償を含めて数種類開発されているが、現行のGlobalFiler検査キットのような多数のSTRローカスのタイピングにおけるローカス間の連鎖についても考慮した尤度比が算出できる血縁鑑定のソフトウェア(KinBN)を開発した。また、単に尤度比の算出のみでなく、複数の参照者が関わる血縁関係のSTR型を多く合成して、尤度比を算出するシミュレーションを行い、その検査システムを評価できる機能を付加するよう工夫した。連鎖を考慮しながら尤度比を算出する過程は煩雑だが、ベイジアンネットワーク(BN)を用いることで解決した。完成したソフトウェア(KinBN)について他の既存のソフトウェアと比較して、ローカス間の連鎖のある場合においても尤度比を正確に算出できることを確認した。ソフトウェアKinBNは誰でも無償でダウンロードして利用できるようネット上に設置した。 十分量DNAのSNPsのタイピング成功率(call rate: CR)は99%を超えていたが、少量化するとCRが低下し3ngになると98.8%となった。この傾向は断片化した試料ではより顕著になり、特に150bp断片化試料では3ngで43.8%にまで低下した。さらに、CRの低下とDNA断片化のない試料による型判定結果との誤判定率(error rate: ER)はより緊密に関連することが示された。これらのデータを基に2者間の血縁鑑定におけるICSの値の変化を観察した。その結果、CRが95%以上あれば、ERが0でなくても第3度血縁(いとこ)まで判断できることがわかった。また、ERが0であればSNPs数を2万5000まで減少させても、第3度血縁まで確実に判定できることが示唆された。今後、変性試料では判定できなかったSNPsの型を補完する作業を始めており、血縁鑑定精度の向上にどの程度貢献するか検討する予定である。
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