2022 Fiscal Year Research-status Report
薬剤耐性(AMR)による疾病負荷推計と抗菌薬適正使用の経済的有効性に関する検討
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19K22781
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
赤沢 学 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (80565135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 治久 九州大学, 医学研究院, 准教授 (30572119)
莊司 智和 山梨大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (40892253)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 薬剤耐性菌 / 抗菌薬適正使用 / メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) / 医療費 / 遺伝子検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
診療報酬請求データである診療群分類包括評価(DPC)データおよび薬剤感受性検査データである感染対策サーベイランス(JANIS)データを用いて、薬剤耐性菌による疾病負荷について推計を行っている。2022年度(令和4年度)は、昨年度に続いて、血液培養から黄色ブドウ球菌が検出された18歳以上の患者を解析対象とし、薬剤耐性であるMRSA群と薬剤感受性であるMSSA群に分類した。血液培養提出から3日目までを経験的治療期間、4日目以降を標的治療期間と定義し、MRSA関連医療行為の実施回数および血液培養提出後の平均医療費を両群で比較した。その結果、入院中死亡率、MRSA関連医療行為の実施回数、医療費はいずれもMRSA群で高かった。特に、標的治療期間ではMRSA感染に要する医療費の増加分は大きく、特に感受性判明後に、より多くの医療行為や抗菌薬が必要となり医療負荷が高くなることが示された。また、MRSA感染による増分医療費は医療機関における薬剤耐性対策の程度に大きく影響することが示唆された。さらに新たな研究として、院内伝播の特定に使用可能な遺伝子検査であるPCR-based Open Reading Frame Typing(POT)法を用いてMRSAを市中由来型と院内由来型に分類し、その特徴と感染症医療費の関係についても検討した。その結果、実臨床においては、POT分類により医療行為並びに医療費には差を認めないことが確認出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、医療施設の感染対策と薬剤耐性菌による疾病負荷の関係性についてDPCデータおよびJANISデータを用いて推計を行っている。まずは、124病院のDPCデータおよびJANISデータから病院の特徴と感染対策の指標を作成し、薬剤耐性菌との関連性を評価した。その結果、病院の感染対策実施状況(薬物血中濃度の測定や培養検査)だけでなく病院の特徴(手術の実施状況など)を多面的に考慮することが薬剤耐性菌の評価においては必要であることが示唆された。本研究結果は国際雑誌に掲載済みである。続いて、薬剤耐性菌感染者(MRSA感染者)と薬剤感受性菌感染者(MSSA感染者)による医療負荷の違いを推計した。その結果、MRSA感染者はより多くの医療資源、医療費を必要とすることが示唆された。さらに薬剤耐性対策を積極的に実施している施設ではそうでない施設に比べMRSA感染による追加的医療費を抑制する可能性が示唆された。本研究結果は国際雑誌に掲載済みである。これらの研究を通じて、どのような薬剤耐性菌対策が、経済的負荷を減らすことに役立つかという新たな研究課題が見いだされた。そのため、研究期間を延長して、効率的な薬剤耐性対策とは何かを検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果によって医療機関レベルでは 細菌検査などの感染対策実施状況や手術実施状況などのリスク因子が薬剤耐性菌発生や増分医療費に影響を及ぼすことが示された。一方、各要因と薬剤耐性菌発生等の関連性の強さは明確ではない。そのため医療機関のDPC、JANIS、病院月報データを用いて、病院の手術関連要因、院内感染要因、抗菌薬使用要因、外部環境、院内感染状況など説明変数を使って、機械学習の手法を用いて薬剤耐性菌発生を予測するモデルの構築を計画している。
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Causes of Carryover |
国際学会のシンポジウムで紹介された「機械学習を用いた抗菌薬の適正使用と薬剤耐性菌リスク予想」の手法を用いることで、さらに研究を発展させる可能性が見いだされたた。そのため、本研究期間を延長して予備的な検討を継続することにした。機械学習による研究の実施可能性をある程度確認出来たら、新たな研究計画を立てて新規の研究助成の申請に繋げて行く予定である。
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Research Products
(6 results)