2020 Fiscal Year Research-status Report
熱中症予防を目指した熱放散反応のガラニン関連メカニズム解明
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19K22795
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤井 直人 筑波大学, 体育系, 助教 (00796451)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 神経ペプチド / 体温 / マイクロダイアリシス / 地球温暖化 / 熱中症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、世界で初めて開発した新型の透析プローブを用いて、局所加温による皮膚血管拡張反応が、ガラニン受容体阻害薬により抑制されるのかどうかを検討した。前腕4部位に、マイクロダイアリシスのチューブを挿入し、それぞれ以下の溶液を還流させた: ①リンゲル溶液 (コントロール)、②ガラニン受容体2阻害薬 (M871)、③ガラニン受容体3阻害薬 (SNAP 37889)、④非選択的ガラニン受容体阻害薬(M40)。局所温度を33度から42度へ上昇させて皮膚血管拡張を起こした。皮下でのガラニン及びガラニン様ペプチドの濃度変化を評価する (ELISA)ため、実験中は、透析プローブから透析液を連続的に回収した。血圧は5-10分ごとに計測した。局所加温により、いずれの部位でも皮膚血流量が増加した。しかし、その皮膚血流増加応答はコントロール部位と各ガラニン受容体阻害薬処置部で違いは見られなかった。したがって、局所加温による皮膚血管拡張反応に、ガラニン受容体は影響しないことが示唆された。この結果は、前年度の全身加温時の結果とは異なる (全身加温による皮膚血管拡張反応はM40により抑制された)。したがって、ガラニン受容体は局所加温でなく、全身加温による皮膚血管拡張にのみ寄与することが示唆される。一方で、皮膚透析液を分析した結果、局所加温時、全身加温時どちらの状況においても、ガラニン及びガラニン様ペプチドの濃度の上昇は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、ガラニンとガラニン様ペプチドを濃度依存的に投与し、その時の皮膚血流量と発汗量を計測する実験を行う予定であった。しかし予備実験で思うような結果が得られなかったことから、急遽、局所加温の実験を行うこととした。コロナの影響で実験の開始が遅れたものの、10名の被験者のデータを得ることができた。コロナの影響でELISAキットの到着が遅れているが、キットが手に入り次第、透析液の分析を行い、国際誌への投稿を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で得られた結果をもとに、ガラニンがどのように全身加温時の皮膚血管拡張応答に影響するかを明らかにする実験を計画中である。具体的には、前腕4部位に、マイクロダイアリシスのチューブを挿入し、それぞれ以下の溶液を還流させる: ①リンゲル溶液 (コントロール)、②非選択的ガラニン受容体阻害薬(M40)、③一酸化窒素合成酵素阻害薬 (L-NAME)、④M40+L-NAME。全身加温時の各部位での皮膚血管コンダクタンス (皮膚血流量/平均血圧)を比較する。皮膚血管コンダクタンスは、最大値に対する%で評価する。もしガラニンによる 皮膚血管拡張反応が一酸化窒素合成酵素を介して生じるならば、①と比べて②、③、④で皮膚血管コンダクタンスが低下し、その低下の程度は②-④で同程度となるはずである。
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Causes of Carryover |
購入を予定していたELISAキットが年度内に届かなかったため、関連の支払いが先送りとなった。ELISAキットを入手次第、速やかに使用する。
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