2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K22813
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
香月 博志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (40240733)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 脳出血 / ビタミンA / レチノイド / トリプトファン / 神経保護 / 脳内炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食事性成分あるいはその代謝物が核内受容体ファミリーをはじめとするリガンド依存性転写因子の活性に影響を及ぼすことなどによって、脳内炎症応答に関わる細胞群の分化や機能発現を制御し脳内出血病態の改善に寄与する可能性を検証すること、およびそれらの検討を通じて脳卒中後の治療介入に資する新たな「脳卒中栄養学」の概念を確立することを目的とする。本年度は、ラット培養脳組織切片のトロンビン誘発性病理解析実験系を用いて、ビタミンA関連化合物である直鎖型レチノイドの作用の解析を進めた。直鎖型レチノイドの大脳皮質神経細胞保護効果はTrkB阻害作用を有するK252aによって遮断されるものの、レチノイドによってBDNFおよびTrkBのmRNA発現量は影響を受けなかったことから、レチノイドの作用はTrkBを介するものではなく、K252aによって阻害される他のキナーゼがレチノイドの保護効果に寄与することが推察された。一方で、NF-κBシグナルを阻害する複数の薬物がレチノイドの線条体組織保護効果を著明に抑制することを新たに見出した。なお、直鎖型レチノイドの保護効果がレチノイン酸受容体拮抗薬により消失することも確認した。また、マウスin vivo脳内出血病態モデルを用いてビタミンA(パルミチン酸レチノール)の効果を検証した。脳出血誘発3時間後から24時間間隔で計3回パルミチン酸レチノールを経口投与したところ、対照群と比較して有意な運動機能改善効果が認められた。以上の知見は、ビタミンA類の強化補給が出血性脳卒中の治療に有益である可能性を示すとともに、ビタミンA群化合物の神経組織保護効果の機序について新たな視点を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビタミンA群および関連化合物の効果の検証および作用機序の解析に関しては、当初の想定以上に順調に知見を蓄積してきている。In vitroにおいては、レチノイン酸受容体への直接作用や代謝変換を経た間接作用の程度に応じて効力は異なるものの、ビタミンA関連化合物が共通して脳内出血関連病理を抑制することが明らかとなり、また大脳皮質と線条体とで異なる作用機序を介してそれらの保護効果が発揮されていることを示唆する興味深い知見を得た。今後は特にPKAやNF-κBを軸としてビタミンA関連化合物の作用機序の詳細を明らかにしていく。さらにin vivoにおいてもビタミンAの経口補給が脳内出血後の運動機能改善に有効であることが明らかになったので、今後はその効果の病理組織学的側面を中心に解析を進める。なお、in vivo脳内出血モデルにおいてはビタミンD(コレカルシフェロール)の効果についても同様の方法で検討したが、通常摂取量の10倍量相当の経口補給条件においても著明な効果は認められなかったため、それ以上の検討は保留としている。 前年度に脳内出血病態における炎症応答抑制効果や運動機能改善効果を示したトリプトファン代謝物である3,3’-ジインドリルメタンについては、ミクログリア系BV-2細胞を用いて他のトリプトファン代謝物との抗炎症作用の比較検討を進めているが、同化合物がin vivoで発揮した効果と矛盾する作用も部分的に認められており、今後慎重に検討が必要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)脂溶性ビタミン強化補給の効果:マウスin vivo脳内出血病態モデルを用いてビタミンA類の経口/経腸補給の効果の詳細について検証する。特に、出血により損傷を受ける脳組織に対する保護効果を明らかにするため、脳実質内の主要な細胞種(神経細胞・アストロサイト・ミクログリア)の免疫組織化学的評価や脳内サイトカイン・ケモカインの発現変化の測定に加え、レチノイン酸受容体の脳内発現分布、好中球の脳内浸潤、骨髄・血中の好中球・単球・Tリンパ球の分化に対する効果等を評価する。また、ラット培養脳組織切片にトロンビンを処置することにより誘発されるin vitro脳内出血病理を解析する実験系を用いて、ビタミンA類(直鎖型レチノイドを中心に)の保護作用機序の解明を目指す。具体的には、レチノイン酸受容体刺激がPKAの発現を増大させ得るとの既報告に基づき、直鎖型レチノイドの大脳皮質神経保護効果にPKAが関与する可能性について検証する。線条体組織保護効果については、これまでの結果からNF-κBシグナルの関与が強く示唆されるので、組織内ニューロンおよびミクログリアにおけるNF-κBの核内移行や炎症性サイトカイン産生量変化に対する直鎖型レチノイドの効果を検証する。 2)トリプトファン強化補給の効果:トリプトファン代謝物の脳実質細胞への直接作用について、引き続きBV-2細胞(トロンビン誘発性サイトカイン・ケモカイン発現に対する効果、およびMAPキナーゼ群やNFκB等の細胞内シグナル伝達系への影響)や培養脳組織切片(トロンビンによる組織内ミクログリアの活性化および遅延性の神経細胞死誘導に対する効果)を用いて検証する。また、トリプトファン代謝物の作用点の一つと考えられるアリル炭化水素受容体の発現分布変化や、脳組織内トリプトファン代謝物含量について、マウスin vivo脳内出血モデルを用いて検証する。
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[Journal Article] Differential mode of cholesterol inclusion with 2-hydroxypropyl-cyclodextrins impacts safety margin in treating Niemann-Pick disease type C.2021
Author(s)
Yamada Y, Ishitsuka Y, Kondo Y, Nakahara S, Nishiyama A, Takeo T, Nakagata N, Motoyama K, Higashi T, Arima H, Kamei S, Shuto T, Kai H, Hayashino Y, Sugita M, Kikuchi T, Hirata F, Miwa T, Takeda H, Orita Y, Seki T, Ohta T, Kurauchi Y, Katsuki H, Matsuo M, Higaki K, Ohno K, Matsumoto S, Era T, Irie T.
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Journal Title
Br J Pharmacol.
Volume: -
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A synthetic retinoic acid receptor agonist Am80 ameliorates renal fibrosis via inducing the production of alpha-1-acid glycoprotein.2020
Author(s)
Watanabe H, Bi J, Murata R, Fujimura R, Nishida K, Imafuku T, Nakamura Y, Maeda H, Mukunoki A, Takeo T, Nakagata N, Kurauchi Y, Katsuki H, Tanaka M, Matsushita K, Fukagawa M, Maruyama T.
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 10
Pages: 11424
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Treadmill Exercise Suppresses Cognitive Decline and Increases White Matter Oligodendrocyte Precursor Cells in a Mouse Model of Prolonged Cerebral Hypoperfusion.2020
Author(s)
Ohtomo R, Kinoshita K, Ohtomo G, Takase H, Hamanaka G, Washida K, Islam MR, Wrann CD, Katsuki H, Iwata A, Lok J, Lo EH, Arai K.
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Journal Title
Transl Stroke Res.
Volume: 11
Pages: 496-502
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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