2019 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋細胞に備わっている「筋萎縮抵抗性プログラム」の解明
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19K22815
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
近藤 茂忠 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 教授 (40304513)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 骨格筋細胞 / 筋委縮 / 筋管細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、骨格筋細胞がもつ筋萎縮ストレス適応能力という観点から筋萎縮をとらえる研究である。本研究の目的は申請者が見出した骨格筋特異的な新規長鎖非コードRNAによる筋萎縮抵抗性プログラムの分子基盤を明らかにすることである。 2019年度は、最終分化させた筋管細胞に萎縮ストレスを与え、細胞周期の再活性化を指標にして萎縮抵抗性の筋管細胞を誘導する細胞モデルを構築した。萎縮抵抗性を獲得した筋管細胞を用いて、RNAプルダウン法により骨格筋特異的長鎖非コードRNAの標的mRNAを2つ同定した。これら2つの遺伝子産物は、骨格筋細胞の脱分化制御において中心的な役割を果たす分子であった。骨格筋特異的長鎖非コードRNAがこれら2つの標的mRNAに及ぼす影響を解析した結果、骨格筋特異的長鎖非コードRNAは各標的mRNAに対して相補鎖配列をもち、この相補鎖配列に依存して結合し、標的mRNAをサイレンシングすることを見出した。このサイレンシングの分子機構については2020年度に解析予定である。 また、筋管細胞を用いた骨格筋特異的長鎖非コードRNAの機能獲得系(過剰発現)解析と、萎縮抵抗性の筋管細胞を用いた機能喪失系(ノックダウン)解析により、骨格筋特異的長鎖非コードRNAによって制御される遺伝子群は2つの標的mRNAの制御遺伝子群と相関することを見出した。これら遺伝子群は骨格筋細胞の分化と脱分化に関係する一連の遺伝子群であることが解った。以上の結果から、骨格筋特異的長鎖非コードRNAによって惹起される筋萎縮ストレス適応の分子基盤となる遺伝子経路が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に実施予定であった全ての研究項目を完了することができたため。具体的には、萎縮抵抗性を獲得した筋管細胞モデルを樹立することができた。この独自の筋管細胞細胞モデルを用いて、骨格筋特異的長鎖非コードRNAの標的mRNAを同定し、骨格筋特異的長鎖非コードRNAによって標的mRNAがサイレンシングされることを明らかにできた。さらに、このサイレンシングの生物学的な意義として、骨格筋特異的長鎖非コードRNAによって制御される遺伝子群と筋萎縮ストレス適応との関連性を明らかにできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2019年度で明らかにした骨格筋特異的長鎖非コードRNAによる各標的mRNAのサイレンシングの分子メカニズムを解明する。さらに、筋萎縮ストレスによってこの長鎖非コードRNAから新たに小分子非コードRNAが創出されるかについても解析を行う。 また、筋萎縮ストレスによる骨格筋特異的長鎖非コードRNAとそのホスト遺伝子の転写制御機構を明らかにする。さらに、各分化段階の骨格筋細胞(筋芽細胞、筋細胞、筋管細胞)における転写制御機構についても明らかにする。これらの解析を通して、長鎖非コードRNAとホスト遺伝子の転写スイッチングがどのようにして骨格筋細胞の分化および脱分化を制御するのかについて明らかにする。
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Causes of Carryover |
2019年度に前倒し申請をしたが、予定していたよりも少ない額で研究が遂行できたため次年度使用額が生じた。使用計画は当初予定通りすべて消耗品にあてる。
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