2020 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋細胞に備わっている「筋萎縮抵抗性プログラム」の解明
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19K22815
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
近藤 茂忠 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 教授 (40304513)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 骨格筋細胞 / 筋萎縮ストレス / 骨格筋細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、骨格筋細胞に備わった筋萎縮ストレス適応能力という観点から筋萎縮をとらえる研究である。本研究の目的は申請者が見出した骨格筋特異的な新規長鎖非コードRNAによる筋萎縮抵抗性プログラムの分子基盤を明らかにすることである。 2020年度は、骨格筋特異的長鎖非コードRNAによる各標的mRNAのサイレンシングの分子メカニズムについて検討を行った。種々の非コードRNAが標的mRNAをサイレンシングする際に利用する分子群(SMG1, SMG5, SMG6, SMG7, Stau1, AGO1, AGO2, Dicer, UPF-1, UPF-2)の関与について検討を行ったが、骨格筋特異的長鎖非コードRNAによる各標的mRNAのサイレンシングはこれら因子には依存していなかった。次に各分化段階の骨格筋細胞(筋芽細胞、筋細胞、筋管細胞)において、骨格筋特異的長鎖非コードRNAから新たに小分子非コードRNAが創出されるかについて解析を行った。その結果、骨格筋特異的長鎖非コードRNAのプロセッシングはどの分化段階の骨格筋細胞でも起っていなかった。 骨格筋特異的長鎖非コードRNAとそのホスト遺伝子の転写制御機構について検討を行った。IRS1遺伝子のプロモーター領域には6つの代表的な転写因子結合サイトがあり、IRS1長鎖非コードRNA特異的なプロモーター領域には4つの代表的な転写因子結合領域が存在していた。これら転写因子について解析した結果、ホスト遺伝子の転写にはGRE,ERE領域とC/EBPが重要であり、長鎖非コードRNAの転写にはE-box領域が重要であることが解った。 以上の結果から、骨格筋特異的長鎖非コードRNAは小分子非コードRNAにプロセッシングされることなく機能すること、長鎖非コードRNAとそのホスト遺伝子の転写制御は異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に実施予定であった研究項目は概ね完了することができた。しかしながら実施予定であった研究項目のうち、各分化段階の骨格筋細胞(筋芽細胞、筋細胞、筋管細胞)における、骨格筋特異的長鎖非コードRNAとそのホスト遺伝子の転写制御機構についての解析が遅れたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2020年度で明らかにした骨格筋特異的長鎖非コードRNAとそのホスト遺伝子の転写制御機構に基づき、各分化段階の骨格筋細胞(筋芽細胞、筋細胞、筋管細胞)における転写制御を明らかにする。さらに、長鎖非コードRNAとホスト遺伝子の転写スイッチングがどのようにして骨格筋細胞の分化および脱分化を制御するのかについて明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究遂行に想定以上の時間を要したため。また、新型コロナ感染症の流行により、研究遂行に必要な試薬類の入手に想定以上の時間を要したため。2021年度の使用計画は全て試薬類などの消耗品に当てる予定である。
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