2020 Fiscal Year Research-status Report
化学的・物理的促進法を用いた経皮的薬剤投与に基づく新たな発汗研究手法の開発
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19K22831
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
井上 芳光 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70144566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 達郎 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (60734522)
近藤 徳彦 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70215458)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | エレクトロポレーション / マイクロニードルパッチ / 経皮薬物送達技術 / エクリン汗腺 / 皮膚血管 / 熱中症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は将来的に子どもや高齢者のための新たな発汗機能検査法を確立することを見据え,痛みを伴わずに大きな分子でも汗腺に届けたり,角質層が厚い部位でも薬剤を投与できる新しい研究手法を開発することを目的としている. これまでの研究で電圧80V,1Hz,パルス幅0.1msのエレクトロポレーション装置であれば前腕部で痛みを感じないことを明らかにしているが,この刺激では十分な効果(皮膚バリア機能の低下)がなかった.そのため,まずは従来の装置を改良したハイパワーのエレクトロポレーションを制作した(試作3号機).また,理論上は電極間の距離が狭い程痛みが感じなくなることから,先行研究を参考に,電極間距離や配列を変えて電極を作成して痛みの有無について検討を行った. 申請者自身でパルス幅や電圧を調節しながら検討を進めたが,200Vの電圧をパルス幅1.0ms,周波数1Hzで5分間手掌部に当てても手掌部の角質層のバリア機能(不感蒸泄から測定)は低下しなかった.また200Vは前腕部では我慢できないほど痛く使えなかった.装置の電圧を~500Vまで上げることで手掌部への処置も可能になるかもしれないが,安全性の観点から実用性が低いという結論に達した. このことから皮膚のバリア機能を低下させる別の方策を検討した.マイクロニードルパッチはインフルエンザなどのワクチン接種法として過去に人を対象とした実績があったため,この方法を応用することを試みた.まずマイクロニードルパッチを手掌部に処置した後,染色して手掌部の穿刺孔を確認した.また不感蒸泄量を測定して,ニードル処置で一時的にバリア機能が大きく低下することを確認した.これらのことから,エレクトロポレーションに代わり,マイクロニードルパッチ使って皮膚に穿孔を形成できる可能性が見出された.次年度はいくつかの課題を解決した上でこの新しい方法の確立を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画では,エレクトロポレーション装置を開発して皮膚バリア機能を低下させ,そこから薬剤を投与する計画であった.試行錯誤したものの,エレクトロポレーション装置ではこの目的を十分達成できないと結論付けた.得られた結果は先行研究と異なるものであったが(先行研究では,本研究の条件の範囲内で皮膚バリア機能が低下する),その相違が生じる理由は分からなかった.
しかし,他の方法としてマイクロニードルパッチを用いた検証を新たに始め,良好な結果が得られた.そのため,エレクトロポレーション装置に代わりマイクロニードルパッチを用いることで申請時の目的を同様に達成できると考えた.申請時と手法が異なるものの,当初目的を達成するための見込みができている.以上のことからおおむね順調だと判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度はマイクロニードルパッチを用いて分子が大きい薬剤を皮膚に投与した時の発汗反応を計測できるかどうか,また角質層が厚い部位でも薬剤を投与できるようになるのか解明することを最終目的とする.この検討を行うためには,染色試薬の選定したり,実験条件(パッチのサイズ,ニードルの長さ,被験者の特性など)を確立する必要がある.いくつかの課題を解決した上で,最終目的を達成するための実験を行う予定である.
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Causes of Carryover |
エレクトロポレーション装置の更なる開発をする予定がなくなったが,次年度にマイクロニードルパッチを実験分購入する必要があった.そのため,繰り越し分はマイクロニードルパッチの開発および購入費に充てる予定である.
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