2021 Fiscal Year Research-status Report
同種写像暗号に対する数理的技法による解読法の探求と計算量評価
Project/Area Number |
19K22847
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
安田 雅哉 立教大学, 理学部, 准教授 (30536313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高島 克幸 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (70723964)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 同種写像暗号 / 楕円曲線 / 同種問題 / Deuring対応 / 耐量子計算機暗号 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、超特異楕円曲線間の同種写像の列を利用した同種写像暗号は、量子計算機による暗号解読でも耐性のある耐量子計算機暗号技術(Post-Quantum Cryptography)の1つとして期待されている。具体的には、米国標準技術研究所NISTが2016年以降進めている耐量子計算機暗号の標準化プロセスにおいて、超特異楕円曲線上の鍵交換アルゴリズムSIKE(Supersingular Isogeny Key Encapsulation)は2020年7月にThird Roundに進むことが許可された15方式の内の1つに選出された。同種写像暗号の安全性は、2つの同種な楕円曲線を結ぶ同種写像の列を具体的に計算する同種写像問題の計算量困難性に依存する。一方、楕円曲線論において、有限体上の超特異楕円曲線全体と四元数環におけるmaximal order全体が1対1に対応するDeuring対応が知られている。本年度(2021年度)は、超特異楕円曲線のDeuring対応下における四元数環上の同種写像問題を効率的に解くKohel-Lauter-Petit-Tignol(KLPT)アルゴリズムの高速実装に成功した。また、実装開発したKLPTアルゴリズムに加えて、超特異楕円曲線のねじれ点の高速探索法を提案し、与えられたイデアルにDeuring対応する超特異楕円曲線を求める構成的Deuring対応問題を実用的な処理時間で求解可能であることを示した。(近年、構成的Deuring対応計算は超特異楕円曲線の同種写像列を利用した署名方式などで非常に注目されている。)これらの研究成果は、多数の国内会議で発表すると共に、査読付きの国際会議・国際雑誌にも採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超特異楕円曲線に関するDeuring対応下における四元数環上の類似同種問題に対するKLPTアルゴリズムの数式処理システムSageMath上の動作確認と高速化に成功した。また、超特異楕円曲線の同種写像列を利用した署名方式などで利用される構成的Deuring対応計算についても、今回開発した手法により実用的な処理時間で実行可能であることを示すことができた。このように、同種写像問題に関連する数理問題に対して実用的な計算法の提案・実装・数値実験を予定通り進めると共に、査読付き国際会議・国際雑誌における論文採択や国内発表という目に見える研究成果を着実に挙げ、おおむね当初の計画通りに研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発したKLPTアルゴリズムや構成的Deuring対応に関するアルゴリズムを基に、超特異楕円曲線の自己準同型環の決定問題の求解可能性を解析する。また、自己準同型環の決定問題と同種写像問題の関連性を解析すると共に、同種写像暗号の安全性解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
世界的な感染症対策の影響で、当初予定していた旅費が使用できなかった。2022年度は、主にリサーチアシスタントなどの人件費として使用する。
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