2019 Fiscal Year Research-status Report

時間方向並列化と連成カプラーを用いた超高解像度・長期気候シミュレーションの革新

Research Project

Project/Area Number	19K22853
Research Institution	National Institute for Environmental Studies
Principal Investigator	八代尚国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (80451508)
Project Period (FY)	2019-06-28 – 2022-03-31
Keywords	高性能計算アプリケーション / 数値シミュレーション / マルチスケール / 気候 / 超並列計算
Outline of Annual Research Achievements	今日のスーパーコンピュータは計算機をたくさん並べて並列に計算することによって省電力・高速化を達成している。しかし、数百年にわたる気候シミュレーションを高空間分解能で、かつ高速に計算するために、空間方向の領域分割を用いた並列化を行うと、どんなに計算機の並列規模をあげてもそれ以上高速化しない限界が訪れる。本研究は時間方向並列化の手法を用いることにより、この速度限界を打破する階層型気候シミュレーション基盤を構築することを目的とする。本年度は時間方向並列化手法であるParareal法を気候シミュレーションに適用するための準備として、空間解像度の異なる２つの大気シミュレーションを連成させるシステムの構築を進めた。2つの異なる解像度設定をもつ全球大気モデルNICAMのシミュレーションを並行して実行し、風速や気温等の変数をシミュレーション内の適切な時刻でお互いに通信し、それぞれのモデル格子点に合うように空間方向の面積重み付け平均あるいは配分処理（リマッピング）を行うことが可能になった。連成システムの構築が完了し、今後はさらに連成計算の結果が期待されるものであるかを長期シミュレーションを行うことによって検証する必要がある。低解像度シミュレーションで高解像度シミュレーションを拘束する実験では、高解像シミュレーションの結果が時空間平均では再解析値をよく追随し、細部においてはより詳細な大気現象を表現出来ている必要があり、より詳しい解析が必要である。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 本年度は時間方向並列化手法であるParareal法を気候シミュレーションに適用するための準備として、空間解像度の異なる２つの大気シミュレーションを連成させるシステムの構築を進めた。カップリングライブラリJcupを用いたシステム開発により、2つの異なる解像度設定をもつ全球大気モデルNICAMのシミュレーションを並行して実行し、風速や気温等の変数をシミュレーション内の適切な時刻でお互いに通信し、それぞれのモデル格子点に合うように空間方向の面積重み付け平均あるいは配分処理（リマッピング）を行うことが可能になった。低解像度側を欧州中期気象予報センター（ECMWF）が配布する大気再解析データERA5で強く拘束した状態での、高解像度の気候実験を開始した。また、Pararealを用いた気候シミュレーションを実現するための開発を行った。時間方向並列化のためのシステムではひとつの低解像度シミュレーションに対して複数の高解像度シミュレーションが同時実行される。また、時間方向に分割された高解像度シミュレーションの結果をすべて用いて次の反復ステージにおける低解像度シミュレーションの補正を行う。これらを並列実行したシミュレーション間のリアルタイムカップリングのみで実現しようとした場合、メモリ上に一時的に確保しておくデータ量が増加してしまうことがわかった。これを解決するために、個々の高解像度シミュレーションとカップリングし、リアルタイムでの空間解像度変換と並列ファイルIOを担当するIOツールプログラムを整備し、オンラインーオフラインハイブリッドでの時空間並列シミュレーションシステムを開発した。
Strategy for Future Research Activity	連成システムの構築が完了し、今後はさらに連成計算の結果が期待されるものであるかを長期シミュレーションを行うことによって検証する必要がある。低解像度シミュレーションで高解像度シミュレーションを拘束する実験では、高解像シミュレーションの結果が時空間平均では再解析値をよく追随し、細部においてはより詳細な大気現象を表現出来ている必要があり、より詳しい解析が必要である。また、Pararealを用いた気候シミュレーションは、大容量データ入出力を回避した並列シミュレーション高速化の目処が立ったため、今後は時空間並列でのシミュレーション結果を本格的に実施し、結果の収束性について解析を進めていく。
Causes of Carryover	本年度計上していたスーパーコンピュータの利用料について、無課金での利用が可能な期間があったため、利用料が発生しなかった。これは次年度のスーパーコンピュータ利用料に上乗せし、シミュレーション回数の増強に充てる。