2020 Fiscal Year Annual Research Report
ヴァーチャル・リアリティー比較社会認知科学の創出:パーソナルスペースの生物的基盤
Project/Area Number |
19K22870
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川合 伸幸 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (30335062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊澤 栄一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (10433731)
池田 譲 琉球大学, 理学部, 教授 (30342744)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 比較認知 / ヴァーチャル・リアリティー / パーソナルスペース / 社会行動 / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまでに調べられてこなかったパーソナルスペースの進化的・生物的基盤を探求するために、高い社会性と視力を有するまったく進化の系統が異なる3類の動物(霊長類・鳥類・頭足類)を対象にして実験的検討を行った。本研究の最大の挑戦は、ヴァーチャル・リアリティー(VR)空間とコンピューターグラフィック(CG)個体を用いて動物の社会行動を調べることである。これまでに空間認知を調べるために動物にVR空間を移動させた研究はあったが、動物のCG個体への社会的反応を調べた研究は実施されていない。それはCG個体の動きが不自然で動物にとって「他個体」に見えないからであった。 本研究では、研究分担者がイカの社会認知を調べるために開発しているCG個体を、霊長類や鳥類に拡張し、高い社会性と視力をもったまったく異なる動物種に適用できるかを検討した。この研究により、「ヴァーチャル・リアリティー比較社会認知科学」というべき新たな研究領域を創出することが期待された。 本年度は、マーモセットのCGを作成し、実際のマーモセットを小さな実験装置に入れて、CG動画を提示した。 動画は、マーモセットが液体報酬を飲んでいるときに提示した。1つは、CGのマーモセットが正面に現れてそのまま動かない静止条件で、もう1つは、CGのマーモセットが正面に現れて前進して近づくものであった。これらを通常のマーモセットと、胎生期にバルプロ酸を投与された他個体との交渉が弱い自閉症モデル(VPA)マーモセットに提示した。その結果、静止画像があらわれても通常のマーモセットはノズルから口を離さなかったが、CGのマーモセットが前進してくると平均7秒以内にノズルから口を離した。しかし、VPAマーモセットは、6個体中4個体までがCGマーモセットが再接近してもノズルから口を離さす、ヒト自閉症と同じようにパーソナル・スペースが小さいことが示唆された。
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Research Products
(8 results)