2019 Fiscal Year Research-status Report
物理モデルに基づくニューラルネットワークの開発と気象物理の探究
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19K22876
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福井 健一 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (80418772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 智彦 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (20344301)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ディープラーニング / 気象予測 / 物理モデル / 残差項 / 温度風方程式 / 地衡風 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,人工ニューラルネットワーク(ANN)において運動方程式などの既知物理モデルによる制約を導入することで,物理モデルに従う成分とそのモデル残差項を分解して学習可能な新規フレームワークを提案した.機械学習によるデータ駆動型予測と物理モデルによるモデル駆動型予測の融合を図ることで,両者の欠点を補い合い予測精度の向上が期待できる.また予測精度のみでなく,残差成分を分解して予測可能になることで学理探究への糸口となる. 本研究では対流圏上層の風速予測を題材に研究を行った.提案ニューラルネットワークは,物理モデル成分(地衡風成分)を学習するネットワークと,モデル残差成分(非地衡風成分)を学習するネットワークのふたつから成る.両者に共通する潜在特徴を共有ネットワークにて学習し,分岐する後段のネットワークにて物理モデル成分と残差成分固有の潜在特徴を学習するようネットワークを構成した.そして,物理モデル成分の学習においては,ニューラルネットワークは湿度,渦度等の分布を入力として中間変数(温度分布)を出力し,その中間変数を用いた物理モデル(温度風方程式)に基づいた予測値(上層の風速ベクトル)と観測値との誤差を最小化する.一方,残差成分の学習では,ニューラルネットワークは前者の物理モデル成分の予測値と観測値との誤差を最小化するようにモデル残差を学習を行う.両者のネットワークを交互に最適化することで学習が可能であることを実験的に確認した. 客観解析データであるERA-Interrimを用いた実験では,温度風方程式やCNNによる予測と比較して提案法は予測精度が向上することを確認した.また,残差成分の予測値は,風ベクトルの収束と発散を表す結果が得られ,ノイズではない物理現象を獲得している可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,物理モデル成分とモデル残差成分を分解して学習可能な新規ニューラルネットワークを考案し,対流圏上層の風速予測に対して提案法の効果を検証した結果を査読あり国際会議にて発表を行っており,概ね順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,温度風方程式以外の検証として,半人工データおよび海面温度分布の予測に適用し,提案法の精度検証および特性をより詳細に明らかにする.半人工データは,例えばMNISTデータに簡単な運動方程式による移動を加えることを検討する.そして学習結果に関して,特に残差成分は何を学習しているのか,またふたつのニューラルネットの潜在特徴空間を可視化することで物理現象として何らかの解釈が可能か,気象学を専門とする分担者と共に検討を行う.
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Causes of Carryover |
国際会議の参加人数が予定より1人減ったこと,論文投稿が少し遅れているため余剰が生じた.次年度の予算と合わせて,ディープラーニング用GPUサーバの購入に充てる.
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