2020 Fiscal Year Research-status Report
Construction of Physical Reservoir Consisting of Nano Material Network
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19K22877
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤井 恵 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50437373)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / ポリ酸 / リザーバ計算 / ナノマテリアル / ダイナミクス / 多端子計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
現状のニューラルネットワークベースの人工知能(AI)は現行のノイマン型コンピューターのフレームワーク内に限定されている。そのAI計算アーキテクチャをより効率的にまた、様々な現実の状況に適合させて利用する為には、最適化されPCから切り離された”フィジカルAI”の実現が将来的に必ず求められることになる。リカレントニューラルネットワークの情報処理手法の一つである ”レザバー計算”は、情報の貯水池である”レザバー”と、外部の信号入力層と読み出し線から構成され、レザバー内構造を学習によって更新しないという特殊性を持っている。その為、フィジカルに再構築する際の制限が他のニューラルネットワークに比べると圧倒的に少なく、環境の変化に適応的でノイズに対して頑健な学習・情報処理を実装できる等の特徴を持っている。よって現在”フィジカルレザバー”研究は非常に注目を集め始めている。 代表者のこれまでの研究でカーボンナノチューブ(Carbone Nanotube : CNT)とポリオキソメタレート(Polyoxometarate : POM)分子の複合ランダムネットワークが神経細胞ニューロン発火のような信号を発生し、このPOM/CNTネットワーク自体が”レザバー”機能を持つことがモデル計算によって示唆された。本研究では、POM/CNTネットワークを実際に作製し、ネットワークの信号の入出力応答を計測する。”レザバー”としての機能を最大限に引き出すように、ネットワーク構造を最適化し、”CNT/分子ネットワークレザバー”を物理的に実現することを研究の目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際に他端子計測装置を開発し、POM/CNTネットワークがレザバーになることを波形生成タスク、NARMAタスク、音声認識を行うことで実証した。さらにメモリキャパシティ計測によってその詳細な性能を評価した。更に、溶液内の電気化学反応でも計算が可能であるということを発見した。ただCNTペーパー上にPOM溶液を滴下し乾燥させると全く非線形性もメモリキャパシティもないことが判明しし、改良としてPOM溶液とCNT分散液を混合し、超音波処理を施すという工程を加えることでレザバー計算に必要な短期記憶能力を飛躍的に改善することに成功した。ただし、これらの機能を応用利用するにはまだその性能が足りない。機能を発現する機構の発見と更なる物質の探索が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
現在本研究の結果を発表する論文を準備中である。またこれまでの結果から、緻密にCNTとCNTの間にPOM分子が挟まるようなCNT/POMネットワークを作ることでこれまで以上に高い非線形特性、メモリ機能を発現させることができるであろうことが判ってきた。本研究で扱ったPOM分子を用いたレザバーの最大の特徴は、他の物理レザバーに比べて圧倒的に簡便であり、分子1つに非線形特性・メモリ機能があるため究極的にはナノスケールでの設計が可能である(小型化、高集積化)という2点である。今後、機能を発現する機構の発見と更なる物質の探索方法の指針付けをする。
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属変更による当初計画の遅延による。成果発表費用とその結果に必要な追加実験に必要な物品購入。
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