2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of multiple classification and comparison methods of cells based on information criteria and their applications to Cell Atlas
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19K22894
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 秀雄 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50183950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬尾 茂人 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (30432462)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 1細胞トランスクリプトーム解析 / 細胞アトラス / 遺伝子発現解析 / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.1細胞トランスクリプトームに基づくクラスタリングの評価 1細胞トランスクリプトームデータからの細胞集団のクラスタリングにおいて、UMAP法などの次元削減により低次元空間に圧縮されることによるクラスタリングへの影響を検討するため、次元削減の影響を受けにくいk-近傍法に基づくグラフベースのクラスタリングとUMAP法での次元削減マップを比較・評価する方法を開発した。これにより、クラスタリングの分割数をグラフの解像度(クラスタの個数を決めるパラメータ)で調整したときに、次元削減マップと重ね合わせることで、次元削減マップ上の位置関係とクラスタ間の接続関係(パラメータをどれだけ変化させればクラスタが併合されるか)の量的な相関を可視化できるようになった。 2.クラスタリングからの細胞系譜解析 1細胞トランスクリプトームのデータから細胞を遺伝子発現の変化に応じて整列させることで得られる細胞系譜の推定手法が多数提案されているため、マウスの造血幹細胞から好中球・単球・赤血球等に分化する1細胞トランスクリプトームデータに対して、複数の細胞系譜推定を行った。推定結果を相互に比較したところ、細胞系譜に分岐が含まれる場合に、手法によっては正しく推定できないことが示され、複数の推定手法の中ではグラフベースの手法の推定結果が最も妥当と考えられた。 マウスの骨髄や末梢血由来の好中球に対して、複数の炎症刺激をかけたときの1細胞トランスクリプトームのRNAシーケンスデータを取得し、前述のグラフベースでの細胞系譜推定手法による推定を行うことで、異なる炎症刺激を受けた好中球が刺激の種類に応じてそれぞれ別の細胞系譜を描くことが示された。これにより、好中球の細胞系譜を相互に比較解析することで、炎症刺激の種類ごとの遺伝子発現変動の違いを定量的に示せるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1細胞トランスクリプトームデータからの細胞のクラスタリングにおいて、次元削減の影響を受けにくいk-近傍法に基づくグラフベースのクラスタリングとUMAP法での次元削減マップを比較・評価する方法を開発した。これにより、次元削減マップ上の位置関係とクラスタ間の接続関係の量的な相関を可視化できることが示された。 また、マウスの造血幹細胞から好中球・単球・赤血球等に分化する1細胞トランスクリプトームデータに対して、複数の細胞系譜推定手法で推定を行った。推定結果を相互に比較したところ、細胞系譜に分岐が含まれる場合に、それらの推定手法の中ではグラフベースの手法の推定結果が最も妥当と考えられた。このため、このグラフベースの細胞系譜推定手法を使って、マウスの骨髄や末梢血由来の好中球に対して、複数の炎症刺激をかけたときの1細胞トランスクリプトームのRNAシーケンスデータに対して細胞系譜推定を行った結果、好中球に対する炎症刺激の応答で炎症の種類ごとに異なる細胞系譜が得られ、炎症刺激の種類ごとの遺伝子発現変動の違いを定量的に表せることを示せた。以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
k-近傍法でのグラフベースのクラスタリングをさらに発展させて、幹細胞等の中間的な性質を持つ細胞集団に対応するため、クラスタ間の重複を許すクラスタリング手法を開発する。その際、クラスタを判定するスコアとしてベイズ情報量基準が使えるように拡張する。 また、マウスの骨髄や末梢血などの生体組織から採取して1細胞RNAシーケンスして得られた遺伝子発現データを、既に公開されているマウス細胞アトラス等の公共データと細胞間の対応付けと比較を行い、情報量基準とグラフ構造に基づく多重比較・分類システムを開発し、システムの性能評価を行う。
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Causes of Carryover |
1細胞トランスクリプトームデータに対するクラスタリング手法と細胞系譜推定手法の先行研究を調査したところ、非常に多くの先行研究が見つかったため、当該年度は先行研究の調査と、各手法の結果の比較評価、さらに本研究で行う手法の開発に向けての方針決定に注力した。このため、当該年度に予定していた、新規の1細胞トランスクリプトームデータの取得や研究成果発表が次年度に繰り越しとなったため、次年度使用額が生じた。しかし、非常に多くの先行研究結果との比較評価が行った結果、本研究で開発する手法の有効性が明確となったことから、次年度に予定していた先行研究との比較評価を前倒しで行うことができたため、本研究全体の進捗には影響はない。
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