2020 Fiscal Year Research-status Report
法律の効果について二手先を予測するシステム開発に関する研究
Project/Area Number |
19K22899
|
Research Institution | Niigata Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 誠 新潟工科大学, 工学部, 准教授 (50377438)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
的場 隆一 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30592323)
萩原 信吾 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50635224)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
Keywords | エージェント / シミュレーション / 改正労働契約法 |
Outline of Annual Research Achievements |
法律は,政府が主導する政策に沿って制定され,社会的,経済的効果をもたらすことが期待される.しかし,必ずしも当初の予想通りの効果がもたらされるとは限らない.この原因は,政策を決定した段階において,法律施行直後の効果の予測(一手先の予測)ができても,さらにその先の人間の行動を反映した予測(二手先の予測)が事前にできないことにある.すなわち,これが実現できれば,それを補うべくより効果的な政策が期待できる.したがって,本研究の目的は,法律制定後の二手先の予測をするモデルを提案し,数年後に与える社会的,経済的な効果を予測することで政策決定に必要な新たな判断材料を提供することである. 本研究においては,改正労働契約法による雇い止めの問題を取り上げ,自律的に行動するエージェントを提案し,シミュレーションによる検証を行う.エージェントは会社エージェントと労働者エージェントに分けられ,会社エージェントは生産量と景気から応募者を雇用するか否か,また,毎年度末に有期雇用契約を継続,打ち切り,無期雇用に転換するかを決定する.労働者は,無期雇用,有期雇用,無職の状態に分けられ,勤続期間が長いほど労働力が増加する.会社エージェントの学習には強化学習のひとつであるQ学習を用いた. 今年度は,改正労働契約法による雇用形態の変化をシミュレーション上で観察した.実験の結果,改正法の施行により無期雇用労働者の割合が増加することが確認された.ここでの結論は,企業は景気動向に左右されることなく無期雇用労働者を雇用する可能性が高くなるということである.これは,この政策の期待された結果であり,改正法施行後の経済格差が何によって生じるのかを検証できる小さな経済社会,すなわち一手先の予測が実現したことを確認できた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における達成目標は次の4段階を想定している.(1)マルチエージェントモデルによる経済社会の実現(2)現実世界のデータを用いた社会の再現(3)法律の効果について二手先を予測(4)経済問題に関するその他の法律の効果に関する問題. このうち,(1)および(2)について達成し,改正労働契約法が本来目的としていた無期雇用労働者の増加を実現するような社会を確認できた.また,(1)の構築が予想よりも困難であった反面,それが実現できたことから,将来の目標としていた(4)の構築が実現可能性を帯びてきた.これらを鑑みておおむね順調に進展していると考えることができる.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究における目的である二手先の予測が達成できていないため,モデルの構築を行う.また,学習精度を向上させるとともに,どのような理由から雇い止めが行われるのかという分析が可能にするため,データを可視化する.これらの研究成果を論文としてまとめる.
|
Causes of Carryover |
国際会議に参加することを想定して旅費を申請していたが,海外出張をする機会が無くほとんどが未使用となってしまった.シミュレーションおよび検証を行うため,計算機等を追加購入する予定である.
|
Research Products
(2 results)