2019 Fiscal Year Research-status Report
大気エアロゾル・海洋表面マイクロ層における光反応の実験的解明への挑戦
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19K22901
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
羽馬 哲也 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20579172)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 海洋表面マイクロ層 / エアロゾル / クチクラ層 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者が2020年1月1日に北海道大学から東京大学へ異動となったため,本年度は実験装置の解体,移設をおこなう必要が生じた.そこで,実験装置を解体するまでの限られた時間の中で予察的な研究をおこなったところ,興味深い成果が得られたのでここに報告する. 植物の葉の総表面積は地球の表面積のおよそ40 %に達し,大気エアロゾルや海洋表面マイクロ層と同様に,今後の気候変動を予測するうえで非常に重要な反応場である.それにもかかわらず,植物の葉の表面でどのような化学反応がおきているかについては今でもほとんどわかってない.この一因として,葉の表面でおきている化学反応をその場分析する手法がないことが挙げられる.そこで,偏光変調赤外反射吸収分光法による葉の表面の非破壊その場分析法を開発した.ヤセイカンランについて測定をおこなったところ,クチクラ外ワックス(葉の最表面を覆う厚さ10-100 nmほどのワックス層)の赤外スペクトルを非破壊で得ることに成功した. 得られたワックスの赤外スペクトルを解析したところ,ワックス分子の炭素鎖は葉の表面でall-trans zigzag構造という安定な構造で存在していることがわかった.また,ヤセイカンランの葉をクロロホルムへ浸漬したのちに測定をおこなったところ,葉からワックスが除去されていることも赤外スペクトルから明らかにできた.これらの成果は,偏光変調赤外反射吸収分光法を用いることで葉の表面でおきる化学反応を非破壊その場追跡できる可能性を示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで困難であった植物の葉の表面の非破壊その場分析が可能になったため.偏光変調赤外反射吸収分光法は葉の表面だけでなく,水の界面に存在する界面活性な有機分子の膜(ラングミュア膜やギブズ膜)にも応用可能であるため,今後,海洋表面マイクロ層やエアロゾル界面の研究も偏光変調赤外反射吸収分光法を用いることで発展する可能性が高い.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,当初の計画通り海洋表面マイクロ層やエアロゾル界面についての光化学反応についての実験研究をおこなう.また,本年度の研究成果を活かして,偏光変調赤外反射吸収分光法を用いて水界面に吸着した有機分子の膜の構造を調べる研究についても発展させる予定である.
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Causes of Carryover |
研究代表者が2020年1月1日に北海道大学から東京大学に異動したため.異動の準備期間などは実験をしておらず,消耗品の消費量が研究計画時の見積もりよりも少なくなったため,次年度使用額が生じた.
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Research Products
(14 results)