2020 Fiscal Year Research-status Report
尿・血中のmiRNAから必須元素の健康影響を予知・診断する
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19K22907
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
矢嶋 伊知朗 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (80469022)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 元素 / 皮膚 / miRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
環境中の元素が及ぼす健康影響をmiRNAの発現解析によって解明することを目的として、培養細胞を用いた解析を実施した。昨年度までに同定された元素関連miRNAに関してinhibitor, mimicタイプのmiRNAを用意し、transfectionを実施することで機能解析を行った。特に皮膚障害に関する機能解析を優先するため、人正常皮膚角化細胞株(HaCaT)及びメラノサイト培養細胞株(melan-a)を用いた。 昨年度までの研究成果より、元素関連miRNAにはHaCaTとmelan-aの増殖活性に影響を与える可能性のあるmiRNA (#001, #002, #003)と、HaCaTとmelan-aのアポトーシスに影響を及ぼす可能性のあるmiRNA (#004, #005, #006)、そしてmelan-aにおいてメラニン産生に影響を及ぼす可能性のあるmiRNA (#007, #008, #009)が同定されたため、それぞれのmiRNAに対してinhibitor, mimic miRNAを用意した。 その結果、HaCaTとmelan-a両方の増殖活性に影響を及ぼすmiRNA、HaCaTの増殖活性にのみ影響を及ぼすmiRNA、HaCaTとmelan-aの両方のアポトーシスに影響を及ぼすmiRNA、melan-aのアポトーシスにのみ影響を及ぼすmiRNA、melan-aにおいてメラニン産生に影響を及ぼすmiRNAが存在することが明らかとなった。これらの結果は、元素暴露による皮膚関連細胞の形態的・機能的変化が、元素暴露によるmiRNA発現変化によって直接的に制御されていることを示しており、miRNAの機能を人工的に制御することで元素誘発性疾患の予防・治療法開発に寄与できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り機能解析が実施され、目的とする元素誘発性疾患に関連するmiRNAの同定及び機能解析が順当に進んでいる。予防・治療法開発につながる成果も得られており、ここまでおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果をもとに、1)元素誘発性疾患に関与するmiRNAのより詳細な機能解析と疾患発症機構の解明、2)miRNAを疾患予知、診断するための手法の開発、3)疾患の治療ターゲットとしての有効性の検証を実施する。 1)については昨年度の実験手法を踏襲して未解析のmiRNAの解析や、判明した機能発揮機序に関連する分子との関連性をより詳細に解析する。2)については元素曝露後のmiRNA発現のタイミングや発現量を詳細に解析し、予知・診断法に寄与できるプロトコル開発の予備データを測定する。3)については元素曝露による疾患発症に対する有効なinhibitor, mimic miRNAの投与のタイミングや量、配列等を検証する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として計上した金額は当初、細胞実験における曝露試験や発現量解析、miRNA機能解析等に使用する予定であった。しかし一部の実験は次年度に実施予定の予知・予防解析や治療法開発に必要な実験と共有した実験計画によって実施可能であり、次年度使用を行ったほうが研究計画の完了に有効であり、より効果的に成果を出すためにも有効であることが判明した。 よって本年度購入予定の試薬を来年度実施予定の実験試薬と合わせての購入計画により、次年度使用と決定した。
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