2021 Fiscal Year Research-status Report
尿・血中のmiRNAから必須元素の健康影響を予知・診断する
Project/Area Number |
19K22907
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
矢嶋 伊知朗 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (80469022)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | miRNA / 元素 / 疾患 / 重金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境中の元素が及ぼす健康影響をmiRNAの発現解析によって解明することを目的として、培養細胞を用いた解析を実施した。昨年度までに同定・解析された元素関連miRNAについて、更に詳細な発現解析及び機能解析を行った。これまで主に皮膚関連細胞をターゲットとして解析を行ってきたが、元素によって誘発される可能性のある臓器は多岐にわたると予想されるため、より多くの臓器を構成する細胞に対して発現解析・機能解析を行うこととした。対象となる細胞は、肝臓細胞、胎生線維芽細胞、肺表皮細胞、神経細胞を選択した。各細胞に対して様々な元素曝露試験を行い、その細胞の生存率や細胞の機能発現への影響を濃度依存的、時間依存的な要素を含めて解析を行った。昨年度までの研究で皮膚細胞において関連性が高いと考えられたmiRNA (#001~#009)のうち、#001, #003, #004, #006, #007, #009のmiRNAのついては肝臓細胞、胎生線維芽細胞、肺表皮細胞、神経細胞における元素曝露において有意な発現量の変化が観察された。また、#001, #004, #007のmiRNAについては元素曝露によって発現量が有意に上昇し、#003, #006, #009のmiRNAは元素暴露によっては発現量が有意に低下した。#002のmiRNAは肝臓細胞では元素曝露によって発現量は有意に低下し、肺表皮細胞では元素曝露によって発現量が有意に上昇し、それ以外の細胞では変化は観察されなかった。#005, #008のmiRNAは肝臓細胞、肺表皮細胞では元素曝露によって発現量は有意に低下し、それ以外の細胞では変化は認められなかった。これらの結果は、我々が新規に同定した元素関連miRNAは皮膚細胞だけでなく、人体を構成する様々な種類の細胞に対しても応答を行うことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りmiRNAの発現解析と機能解析を実施している。同定したmiRNAの新たな発現パターンや機能も明らかとなり、ここまでおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定された元素関連miRNAの他の細胞種での発現パターンが明らかとなったため、今後はこれらの細胞での詳細な発現パターンと機能解析を実施する。これらの解析を行うことで、今回新規に同定したmiRNAが皮膚疾患だけでなく、人体の様々な臓器・細胞に及ぼす疾患を予知・予防・治療するための知見が得られると期待できる。
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Causes of Carryover |
本年度の研究によって、元素関連新規miRNAは、元素曝露において皮膚系細胞だけでなく様々な細胞腫に対しても多様な発現パターンを示すことが予想外に明らかとなった。本研究成果は予想外ではあるものの、本研究課題の達成においてはその詳細を解析することがより大きな成果へと結びつく可能性が高いと考え、本年度後半では様々な細胞種での実験研究を開始した。 そのために予定していた事件計画に追加しての研究であったため、次年度にも研究を継続する必要性が生じた。これが、次年度使用額が生じた理由である。 使用計画においては、その殆どは実験用試薬等の購入費として使用予定であり、それらの購入によって実験を推進し、より多くの成果が得られる予定である。
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