2019 Fiscal Year Research-status Report
植物プランクトンに由来するヒドロキシルアミンの生成・放出に関する研究
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19K22910
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
清家 泰 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 特任教授 (30243421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
管原 庄吾 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 講師 (30721302)
神門 利之 (神門利之) 島根県保健環境科学研究所, 環境科学部, 部長 (70838408)
江川 美千子 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助手 (20565882)
加藤 季晋 島根県保健環境科学研究所, 水環境科, 研究員 (20791734)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ヒドロキシルアミン / 植物プランクトン / ラン藻 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒドロキシルアミン(NH2OH)は、バクテリアによる窒素サイクルにおいて、硝化プロセス及び硝酸還元プロセス、並びにAnammox反応の中間体として生成されることが知られている。このようにNH2OHは微生物代謝に係る重要化学種であるが、最近、フィールド調査により、植物プランクトンによるNH2OHの生成を示唆するデータを得たことから、本研究に着手し、次の課題 A), B)を念頭に検討を進めてきた。 A) 現場観測によるNH2OHとChl.aの関係をみると、バラツキも見られることから、① 植物プランクトンの種類によってNH2OHの生成能が異なる可能性がある。② バクテリア(硝化・脱窒)の関与も否定しきれない。 B) ラン藻のみならず珪藻および緑藻によるNH2OHの生成の有無についても検討を要する。 2019年の主な研究成果の概要を以下に示す。(1) NH2OHおよびChl.aの鉛直分布観測では、物プランクトンの生産層(有光層)において高濃度のNH2OHとChl.aが観測され、NH2OHの生成が植物プランクトン由来であることが示唆されている。 その他、当初の研究計画に予定はなかったが、NH2OHの定量において、酸化剤に次亜塩素酸塩を用いる従来法は、酸化力が強いため、本研究のように有機物(植物プランクトン)を多く含むサンプルを対象とする場合、NH2OHの定量値が過小評価されることが懸念されたため、新たな定量法(酸化剤としてFe(Ⅲ)を用いる方法)を開発した。この新規定量法については、学術誌に投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年(初年度)は、三瓶ダム(島根県)を対象に、当初計画通りフィールド調査に力点を置き、基礎データの収集(1), (2)及び優占種の単離(3)を目的に調査研究を進め、以下に示すように概ね予定通りの進捗状況にある。 (1) NH2OHおよびChl.aの鉛直分布観測: 5, 6, 7, 9, 10,及び11月にフィールド調査を実施した。前述したように、有光層におけるNH2OHの生成が植物プランクトン由来であることを示唆する有用なデータを取得している。 (2) 植物プランクトンの優占種の検鏡・同定: 深度1mより北原式採水器を用いて採水し、研究室にてフィルターで濾過後100倍濃縮した試料を用いて生のまま出現種を同定した。6月の優占種は藍藻 Dolichosperumum planctonicum, 7月は珪藻 Ulnaria japonica, 9月は藍藻 Aphanizomenon cf. flos-aquae, 10月は藍藻 Geitlerinema sp.であった。このように調査するごとに優占種は異なっていた。 (3) 優占種の単離培養: 分離して継代培養している培養株は以下の通りである。藍藻:Microcystis sp., Pseudanbaena sp., Dolochospermum crassum,Dolichospermum planctonicum, Aphnizomenon cf. flos-quae; 珪藻:Cyclotella sp., Aulacoseira granulata , Asterionella formosa, Fragilaria crotonensis; 緑藻:Volvox aureusである。このように本水域の主な優占種の単離に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度(2019)に実施の基礎データの収集(1), (2)(前述)については、本年度(2020)も引き続き実施する。そして、当初計画通り、「(4) 優占種の無菌培養によるNH2OHの生成の有無の検討」に着手し、単離した培養株を用いた無菌培養により、NH2OHの生成・放出が、特定の植物プランクトン種によるものか、植物プランクトンが有する一般的な能力なのかを明らかにする予定である。 なお、NH2OHの測定には、2019年に開発した新規定量法(酸化剤としてFe(Ⅲ)を使用する方法)(本法)を用いことにしている。本研究のように、植物プランクトン(有機物)をターゲットにする場合、本法は特に有効と考えている。
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Causes of Carryover |
標準ガス(N2O:プッシュ缶タイプ)1本を補充のため購入しようとしたが、納期に間に合わなかったため、次年度使用額が生じた。次年度にその購入に使用予定である。
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