2019 Fiscal Year Research-status Report
窒素同位体モデルを用いた新たな古海洋窒素サイクル解析手法の確立
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19K22917
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
吉川 知里 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生物地球化学プログラム), 技術研究員 (40435839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重光 雅仁 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋観測研究センター), 技術研究員 (20511695)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 窒素同位体比 / 古海洋 / 窒素同位体モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋表層水中の硝酸濃度は、海洋の一次生産を決める主要な要因である。それゆえ、海洋全体の生物生産量を決める要因であるとともに、海洋の炭素サイクルを駆動するエンジンである。したがって過去の海洋変動を理解する古海洋学にとって、海洋表層の窒素循環は長らく研究の本丸と見なされてきた。この重要な地球環境要素を復元するため、海底堆積物に含まれる全窒素の窒素同位体比がこれまでプロキシ(代替指標)として用いられてきた。しかし、窒素同位体比の解釈は単純ではなく、海洋表層の一次生産者の窒素同位体比は、大きく分けると3つの要因によって決まる。つまり、窒素同位体比記録の解釈には複数の可能性が生じるため、その海域の特性に応じた解析が必要となる。 そこで本研究では、窒素同位体モデルを用いて、海域特性に応じた窒素同位体比記録の解析手法を提示する。本研究では窒素同位体モデルを用いて、各海域における窒素同位体比変動を決める要因をあらかじめ明らかにすることで、全球海洋において海域特性に応じた窒素同位体比記録の解析手法を提示する。この結果を用いることで、窒素同位体比記録の解釈を単純化でき、より定量的な考察が可能となると考えている。対象とする時間範囲は、大きな窒素同位体比変動が報告されている(Galbraith et al. 2013)、気候の大規模な再編期を含む退氷期(2.1万年前の最終氷期最寒期から1万年前の間氷期)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の予定通り、Yoshikawa et al. (2005)の窒素同位体モデルに、窒素固定と水柱・海底における脱窒を導入し、産業革命前の気候場を用いて海洋窒素同位体モデルを駆動した。本結果に対して、窒素同位体比変動パターンの類似性に基づくクラスター解析を行い、全海洋を窒素同位体比の変動特性から区分けした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、2.1万年前の気候場と、分担者の重光と協力者の山本が提供する硝酸や鉄などの栄養塩の濃度分布を用いて、海洋窒素同位体モデルを駆動し、退氷期実験に向けて初期値を作成する。
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Causes of Carryover |
本年度はワークステーションを購入する予定であったが、条件に合うものが見つからず、既存のもので代用した。来年度以降に購入を検討している。
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