2020 Fiscal Year Research-status Report
高効率なレアメタルの生物学的回収を可能にする光応答性担体の創製
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19K22918
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上高原 理暢 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (80362854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
簡 梅芳 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (20533186)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 担体 / 光触媒 / 酸化チタン / 微生物 / レアメタル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も昨年に引き続き、純チタン金属表面への酸化チタン層の作製およびその光触媒活性を評価するとともに、酸化チタン層上での微生物の挙動について調べた。昨年度は、鏡面研磨して表面をできるだけ平坦にした試験片を用いたが、水の接触角があまり小さくならなかったために、今年度は粗く研磨した試験片を用いた。まず、研磨した純チタン基板を大気中での加熱酸化、もしくは陽極酸化を行った。X線回折により試料表面の結晶相を調べたところ、大気中での加熱ではルチルを、陽極酸化では主にアナターゼを、純チタン表面に形成させることができた。表面に酸化チタン層を形成させた試料に紫外線を照射すると、水に対する接触角が小さくなり親水性が向上した。ただし、大気酸化した試験片については、加熱した電気炉から取り出した直後の親水性が最も高かった。表面に酸化チタン層を形成した試料について、大気酸化した試料については電気炉から取り出した直後と取り出した後1時間保持した試験片を、陽極酸化した試料については紫外線照射した後に、モデル微生物である大腸菌もしくは酵母を培養している培地中に浸漬して、微生物の接着に与える影響を調べた。現状では有意差として明確な効果は見られていないが、親水性が高い試料に対して大腸菌および酵母が接着しやすい傾向が見られた。 さらに、レアメタルを回収するために微生物を足場材料に担持することの有用性を明らかにするために、セラミックス多孔体にモリブデンイオンを吸着する能力のある酵母を担持してモリブデンイオンを含む溶液からモリブデンイオンを回収できるか調べた。セラミックス多孔体に担持しても酵母がモリブデンイオンを吸着できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
酸化条件を選択することにより、結晶相の異なる酸化チタン層を純チタン表面に形成させることができることを明らかにした。酸化条件とその後の紫外線照射等の処理により、表面の親水化を行うことができることを明らかにした。ただし、親水化した表面において微生物が接着しやすい傾向があることは明らかにできたが、明確な効果とまでは言い難くさらなる検討が必要である。また、接着した微生物の脱着についてはこれからの検討課題である。一方で、微生物によるレアメタルの回収において、微生物をセラミックス多孔体に担持することの有用性を明らかにすることはできている。これらのことから、本研究はやや遅れていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
試料の親水化が微生物の接着に影響を与える可能性があることを明らかにしたが、接着特性の向上を目的としているので、微生物の接着特性を向上させる酸化チタン層の形成方法についてより検討する。親水化が微生物の接着に影響を与える影響を引き続き調べるとともに、微生物が接着した試料に紫外光を照射し微生物の脱着挙動についても調べる。さらに、純チタン多孔体の表面にも酸化チタン層を形成させる方法についても検討する。最終的に、レアメタル回収微生物の担持を行い、創製する材料の微生物担体としての可能性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
純チタンの酸化方法と親水化、またその表面への微生物の接着について重点的に調べたために、当初の想定よりも経費がかからなかった。また、新型コロナウイルスの影響により、予定していた出張が中止となり、旅費の支出がなくなった。これらの理由により、当初予定よりも研究費の支出が小さくなった。今年度には、これまでの研究で明らかとなった課題の解決のための備品や消耗品の購入や、成果報告のための経費が見込まれるので、それらの支出に利用したいと考える。
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