2020 Fiscal Year Research-status Report
バイオカソード型MFCを利用した新規脱窒プロセスに関する挑戦的研究
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19K22919
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 千弘 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (30271878)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 微生物燃料電池 / 脱窒反応 / カソード反応 / 排水処理 / 電流消費菌 / 電流産生菌 / 電極の表面構造 / 処理効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機性廃棄物の処理と電気の生産を同時に行うことのできるシステムとして微生物燃料電池(MFC)が注目を集めている。現在のMFCでは、カソードでの電流消費反応には白金などの化学触媒を利用している。一方、細胞外から直接電子を取り込み、化学物質を還元する細菌の存在が知られており、このような細菌を用いることによって、カソードでの電流消費反応にも微生物を用いたバイオカソード型MFCを構築することが可能と考えられる。本研究は微生物燃料電池を改良し、カソード側でも微生物反応を利用して有害物質を処理するバイオカソード型MFCを開発することを目指すものである。 本年度は、T. denitrificansを用いた電気培養を行い、硝酸イオン濃度、pH、共存物質濃度を変化させて、硝酸および亜硝酸イオン濃度の変化と消費電流量を追跡し、カソード側の運転条件の最適化を行った。 また高能力電流消費菌の探索として、国内数ヶ所の嫌気的な環境から採取した細菌群集を接種源として作成した硝酸還元能力を有する硫黄酸化細菌の集積培養から、平板培地を用いて候補細菌の単離を行った。16SrRNA遺伝子解析による同定法により、単離した細菌がSulfurimonas属に帰属することを明らかにした。 電極への細菌の付着量を増大させるために前年度作成した孔径が10ミクロン程度のピンクッション状の構造であるPincushion film(PCF)に対する各種細菌の担持特性を調べたところ、多くの細菌が構造内に良く担持されることが示された。今後この構造を有するカソード電極の作成と評価を行っていく。またカソードで生じる硝酸の還元反応の一部が亜硝酸で止まってしまう問題を解決するため、電極の材質に対する検討も着手しており、いくつかの候補の材質の電極を試作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた計画に対してでこぼこはあるものの、以下のように研究目的達成のために必要な結果は順調に生まれており、研究は概ね順調に進展していると判断した。具体的には、嫌気硫黄酸化細菌の集積培養から目的の電流消費菌の候補となる細菌を単離することができており、電極の表面構造の検討を行い、電極表面に多くの細菌を担持できる構造を明らかにしている。また、カソード電極の材質を変更するという新たなアイデアも取り入れるなどの研究展開が行われている。さらにまだ1報ではあるが学術論文も公表されている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度単離したSulfurimonas 属細菌を用いた電気培養を行い、硝酸イオン濃度、pH、共存物質濃度を変化させて、硝酸および亜硝酸イオン濃度の変化と消費電流量を追跡し、T. denitrificansとの比較を行うとともに、カソード側の運転条件の最適化を検討する。また試作したPincushion film構造を有する電極を用いて、2種の細菌の高密度化に及ぼす効果を検討する。合わせて、亜硝酸の生成が起こりにくい材質からなるカソード電極を試作し、その効果を実証する。 それらの成果をもとにバイオカソード型MFCの運転を行い、その有効性の実証を中心に研究を行う。これまでの結果に基づき改良したバイオカソード型MFC装置を用い、獲得した高能力電流消費菌をカソードに接種して、最適条件の下で運転し、脱窒効率と起電力を評価する。次いでアノード側の有機物濃度と液組成を変化させながら、バイオカソード型MFC装置の最適な運転条件を見出していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、当初予定していた国際学会での発表がキャンセルとなり、旅費等の使用がなされなかった。また、同じくコロナ禍により、研究補助のために学生を雇用することも不能となったため、謝金の支出も行われなかったことによる。なお、これらのことが研究計画の進捗には特に影響は及ぼしていない。 2021年度もコロナ禍の影響が続き国際学会での発表が難しい場合には、その分の旅費等を当初予定していないオープンアクセスの専門誌への投稿費用に振り替えるなどの対応を行う。
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Research Products
(1 results)