2020 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素微生物固定における低濃度水素利用法の開発
Project/Area Number |
19K22923
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
柘植 丈治 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (70332260)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 化学合成独立栄養細菌 / ポリエステル合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、二酸化炭素の効率的な資源化技術の確立を目指し、生分解性プラスチック素材であるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を化学合成独立栄養細菌Ralstonia eutrophaによって二酸化炭素から独立栄養的に合成することを検討した。その際、供給するガスが漏洩しても爆発しないようにするために、水素を爆発下限界より低い濃度で維持することで、高い安全性を確保しつつ培養を行うことについて検討を行った。 昨年度までに爆発下限界より低い水素濃度でも、R. eutrophaが増殖することを確認し、また、窒素源やリン源を欠乏させた培養条件において、細胞内に最大で70 wt%のPHAを蓄積することを確認した。また、そのPHAはポリ(3-ヒドロキシブタン酸)[P(3HB)]で、十分に高い分子量を有していることを確認した。さらには、組換え株を育種することで、PHA共重合体が合成可能であることも示した。 今年度は、炭酸脱水酵素をR. eutropha内で過剰発現させることで、炭酸固定能に及ぼす影響について調査した。炭酸脱水酵素は、水中で二酸化炭素と重炭酸イオンとの平衡反応を触媒する酵素である。この酵素が働くことで、細胞内に取り込まれた重炭酸イオンは二酸化炭素に変換され、カルビン回路へと供給される。実験では、プラスミドを用いて炭酸脱水酵素遺伝子のコピー数を増やすことで、炭酸脱水酵素の発現量を増やした。その結果、窒素源が枯渇した培養条件において、ポリエステル合成量が有意に増加することがわかった。また、独立栄養培養のみならず、グリセロールを共存させた混合栄養培養においても、ポリエステル合成量が増加することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
爆発下限界より低い水素濃度でも、独立栄養的にR. eutrophaを増殖させ、かつ、炭酸脱水酵素の過剰発現によりポリエステル生合成を増強することができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年に引き続き、R. eutrophaを培養する際に、水素濃度を低く維持しながらも高い菌体生育速度を得るために、遺伝子組換えにより水素および二酸化炭素利用に関わる酵素の発現を強化することを試みる。安全に配慮しつつ、水素濃度をどこまで高くすることが可能なのかについても検討を行う。
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Causes of Carryover |
昨年度は、緊急事態宣言などにより実験ができない期間があったため、当初予定していたよりも少ない支出となった。
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