2019 Fiscal Year Research-status Report
藻類の成長を促進する共生細菌の検索とその利用による高効率バイオマス生産技術の開発
Project/Area Number |
19K22930
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池 道彦 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40222856)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 大介 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70448091)
黒田 真史 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20511786)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
Keywords | 藻類 / バイオマス / 成長促進細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、特に資源価値の高い藻類を対象として選定し、それらの成長促進に有望な藻類成長促進細菌(MGPB)を下排水等からスクリーニングし、MGPBの各種特性ならびに成長促進メカニズムを解明することにより、藻類とMGPBの共生関係を活用した実用的な藻類バイオマス高効率生産技術の基礎を確立することを目的としている。 初年度となる2019年度においては、資源価値の高いパラミロンやワックスエステル、アミノ酸、ビタミンなどを蓄積し、特に資源価値が高いことが知られているユーグレナ(Euglena gracilis)を対象藻類として選定し、検討を進めてきた。まず、都市下水処理場より採取した下水を用いてユーグレナを培養した結果、微生物の存在によりユーグレナの成長が促進されることを確認した。そこで、ユーグレナ培養後の下水、及びユーグレナ表面より、R2A培地を用いて従属栄養細菌を分離した。最終的に、コロニー形状の異なる20種類(前者・後者より各10種類)の細菌株を分離することができ、16S rRNA遺伝子配列に基づいて各分離菌株の系統分類学的特徴を明らかにした。 他方、MGPBによる藻類の成長促進メカニズムを明らかにするための基礎的知見として、関連文献情報を調査し、既知の藻類成長促進メカニズムを整理した。 さらに、最終的な目標とする高効率藻類生産システム/プロセスの提案に向け、浮遊物質の存在や下水の希釈(有機物、栄養塩類の濃度)、光照射条件などの因子が下水を用いたユーグレナの培養に及ぼす影響について検討し、好適な条件を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は複数種の藻類を対象にしてMGPBのスクリーニングを進める予定であったが、MGPB候補菌株の取得方法の検討に時間を要したため、現時点ではユーグレナのみでの実施となっている。今後、藻類種の拡大についても進めていく予定をしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、既に取得した細菌株に対して、ユーグレナや他の藻類に対する成長促進効果を試験し、優れた成長促進効果を示すMGPBを明らかにする。また、選抜されたMGPBに対して、生理学的特性や基本的な培養特性、成長促進可能な藻類のスペクトルなどを明らかにしていく。一方、そのMGPBによる藻類成長促進メカニズムについて、陸生植物において既に知られている成長促進作用、ならびに未知の成長促進作用の関与の可能性について調査を進めていく。また、MGPBと藻類の共培養による高効率藻類生産システム/プロセスの構築に向けて、両者の共培養を効果的に行うためのMGPB植種方法や環境条件制御に関する基礎的な検討を進めていく予定です。 また、これらの各検討で得られた成果は、学協会における発表や学術雑誌への論文投稿などを通じて、広く情報発信に努める。
|
Causes of Carryover |
MGPB分離方法の検討に時間を要し、ユーグレナ以外の藻類を用いた検討までが進めることができなかった。また、年度末に関連情報収集のための参加を予定していた学会が急遽中止となった。これらのために当初計画よりも今年度の使用額が少なくなったが、ユーグレナ以外の藻類を用いた検討を次年度に実施するために使用する予定である。また情報収集のための学会参加も可能な限り積極的に行い、得られた知見を研究推進に生かしていきたいと考えている。
|