2020 Fiscal Year Research-status Report
藻類の成長を促進する共生細菌の検索とその利用による高効率バイオマス生産技術の開発
Project/Area Number |
19K22930
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池 道彦 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40222856)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 大介 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70448091)
黒田 真史 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20511786) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 藻類 / バイオマス / 生長促進細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、特に資源価値の高い藻類を対象として選定し、それらの成長促進に有望な藻類成長促進細菌(MGPB)を下排水等からスクリーニングし、MGPBの各種特性ならびに成長促進メカニズムを解明することにより、藻類とMGPBの共生関係を活用した実用的な藻類バイオマス高効率生産技術の基礎を確立することを目的としている。 前年度の研究において、下水中でユーグレナ(Euglena gracilis)を培養し、培養後の下水ならびにユーグレナ表面より、合計20株の細菌株を分離した。2020年度の研究では、新規に分離した20株の細菌株を対象として、ユーグレナに対する成長促進効果の調査を行った。6穴プレートを用いてスクリーニング試験を行い、ユーグレナ個体数に基づいて成長促進を評価した結果、20株のうち6株との共培養により、無菌のユーグレナに比べて優れた成長促進が確認された。特に、そのうちの1株との共培養では、ユーグレナ個体数が無菌系に比べて約3倍高くなった。次に、スクリーニング試験において優れたユーグレナ成長促進効果を有する可能性が考えられた3株を選定し、フラスコスケールで共培養試験を実施し、ユーグレナ成長促進効果についてさらに検証を進めた。その結果、3株のうち2株と共培養した場合、無菌系に比べて個体数が1.2倍あるいは1.4倍増加し、ユーグレナに対して明確な成長促進効果を有することが明らかとなった。また、そのうち1株(Cloacibacterium sp. S9)は、パラミロン濃度も顕著に増加させることが確認され、ユーグレナの成長を促進させるだけでなく、資源価値の高いパラミロンの増産に対しても有効な共生菌株であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は複数の藻類を対象としたMGPBのスクリーニングを進めることを予定していたが、ユーグレナを対象とした検討に予想以上の時間を要したため、現時点では他の藻類に対する検討が行えていない。これまでにユーグレナを対象として確立した実験系により、今後、藻類種の拡大を進めていく予定をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ユーグレナのバイオマス及びパラミロン生産に対して明確な効果を有することが確認されたS9株を対象として、生理学的特性や基本的な培養特性、成長促進のメカニズムなどについて順次調査を進めていく予定である。また、本菌株及び他の取得菌株を対象として、他の藻類に対する成長促進の可能性などに関する検討を進めていく。さらに、最終的な目標であるMGPBと藻類の共培養による高効率藻類生産システム/プロセスの構築に向けた各種検討を進めていく。 また、各検討で得られた成果は、学協会における発表や学術雑誌への論文投稿を通じて、広く情報発信に努める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で一時的に研究を停止せざるを得なかったため、ユーグレナ以外の藻類に対する検討まで進めることができなかった。また、同理由により、成果発表及び情報収集のために参加を予定していた国内外の学協会が急遽中止された。これらのため今年度の使用額が当初計画よりも少なくなったが、次年度にユーグレナ以外の藻類を用いた検討を行うために使用する予定である。さらに、積極的な成果発表に加え、情報収集のための学会参加も積極的に行って最新の知見を収集し、研究推進に活かしていきたいと考えている。
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