2020 Fiscal Year Research-status Report
イオン性環境汚染物質がもたらす神経伝達物質への影響の理解と評価法の開発
Project/Area Number |
19K22933
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
野見山 桂 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (30512686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水川 葉月 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (60612661)
池中 良徳 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (40543509)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 質量分析イメージング / モノアミン / 神経伝達物質 / セロトニン / LC-MS/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
高次生物を対象にイオン性環境汚染物質の脳移行に伴う神経伝達物質への影響をメカニスティックにかつグラフィカルに解明する新たな手法の開発を目指すため、マウスを用いたモノアミンの脳における分布と濃度を明らかにする手法を開発する。今回、質量分析イメージング(MSI)とLC-MS/MS法による網羅的かつ高感度・高精度な分析法を適用し、ネオニコチノイド系殺虫剤(NN)投与が脳におけるモノアミンに与える影響を明らかにすることを試みた。事前の研究により、イミダクロプリド(IMI)の投与はマウスに自発運動量の低下を引き起こすことが明らかとなり、何らかの脳神経伝達物質への影響が示唆された。そこで、MSIでモノアミンを含む化合物の網羅的局在解析を行った結果、線条体に分布するDAを検出でき、IMI投与によってその強度が減少傾向にあることが明らかになった。セロトニンは強度が弱いながらも脳全体に分布していた。3-MTおよびヒスタミンは検出することは出来なかったが、網羅的解析により投与群において増加が認められたm/z 222.03の化合物が検出された。さらに、MSIで用いられるDPP誘導体化試薬をLC/MSに適用することで高感度なモノアミン定量法を確立した。本手法を用いて脳の各部位におけるモノアミンの濃度を測定したところ、自発運動に関与していると言われている線条体におけるDA濃度に変化は認められなかったが、嗅球における3-MT、DAの減少、線条体におけるセロトニン、ヒスタミンの減少などが検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、SolariX XR (Bruker Daltonics)を用いて懸案であったモノアミンの質量分析イメージング(MSI)に成功し、ネオニコチノイド系殺虫剤曝露による変化を捉えることができた。また、DPP誘導体化分析法により、LC-MS/MS分析によって脳部位別に高感度なモノアミンの定量化に成功した。従って、MSIとDPP誘導体LC-MS/MS分析を組み合わせることで、微量なマウスの脳中で起こる化学物質曝露に伴う脳内分布の変化を捉えることに成功した。 本研究で目標としていた高次生物を対象にイオン性環境汚染物質の脳移行性と神経伝達物質への影響をメカニスティックにかつグラフィカルに解明する新たな手法を開発にほぼ成功し、今後は新たな誘導体化法を検討し、更に高感度化を目指すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はより微小な脳神経試料(具体的にはゼブラフィッシュ脳およびゼブラ胚試料)を対象に脳神経に作用して行動異常を引き起こす可能性が指摘されているハロペリドールの曝露試験を実施し、Py-TAGを用いた誘導体化法により、LC-MS/MSによる超高感度な脳神経伝達物質分析法の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
北海道大学で実施予定であったハロペリドールのIn vivo曝露試験がコロナ禍のために移動できず、実施することができなかったことから、2021年に予定していた実験の一部を延期することとした。従って、2021年度にマウスを用いた曝露試験、行動解析、神経伝達物質の化学分析、脳イメージング解析を実施し、その諸費用として使用する計画である。
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Research Products
(4 results)