2019 Fiscal Year Research-status Report
大気中のマイクロプラスチックの存在と定量評価に関する研究
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19K22937
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
永淵 修 福岡工業大学, その他部局等, 客員教授 (30383483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 暦 福岡工業大学, 付置研究所, 研究員 (10626576)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 大気中マイクロプラスチック / 顕微ラマン分光光度計 / IR-imaging / マイクロプラスチックの大気輸送 / 自由対流圏 / 樹氷 / 雪 |
Outline of Annual Research Achievements |
化石燃料からプラスチックが製造され 100年が経つ。耐久性のある素材としてガラスや金属が使われてきたが、徐々にプラスチック製品に置き換えられ、過去60 年の間にその生産量が増大、2015年には4億トン/年製造されるまでになった(Treat and Williams 2016)。安価で取り扱いやすいプラスチックは現代の生活の中でいたるところで使われ、我々はその利便性を享受してきた。一方で、適正に処理されなかったプラスチックは太陽光(紫外線)や物理的な力によって粉砕されながら、陸域、河川を経て海洋に流出し、やがては深海にまで到達している (Song et al., 2018 ES&T, online first, Thompson 2015)。環境媒体別にみたマイクロプラスチックの研究は、圧倒的に海域を対象とした例が多く、陸域、特に大気中の調査・研究は限定的である (Zhang Y et.al., 2019, Enyoh CE et al., 2019, Zhang Y., 2020) 。大気汚染による死者数は 700万人/年を越えると報告されており(WHO, 2018)、大気中マイクロプラスチックの存在、拡散、輸送、沈着、残留性有機汚染物質 (POPs)等の吸着を示すことは、その方法論の確立を含めて喫緊の課題である。 本研究の目的は、大気中のマイクロプラスチックの存在の確認およびその定量評価を新規開発した手法を用いて明らかにすることである。 本年度は、大気中のマイクロプラスチックの検出方法の確立を行った。採取容器をガラス等、プラスチック以外の素材を採用(プラスチックフリー)することの検討、採取した試料を観察するための前処理法等について、さらにマイクロプラスチックの大気輸送について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、おもに降水・雪・樹氷試料中 マイクロプラスチックの検出方法の確立を行った。福岡市内および、九州の自由対流圏高度で上記試料の採取を行った。採取にはプラスチックを排除するために、ステンレス製トング、スプーンを利用、採取ビンについてもガラス製のものを選定した。ポンプによる大気の採取には金属製のフィルターホルダ意を使用した。試料の前処理は、H2O2処理、比重分離等を行い、PTFEろ紙にてろ過しその残渣を顕微ラマン分光光度計、高精細クイックスコープ等で観察を行った。その結果、繊維状、フラグメント等のマイクロプラスチックを観測することができた。プラスチックの種類別では、ポリアミド(ナイロンを含む)、カルボニル系(アクリル樹脂等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、PETなどが多く観察された。また、一部の試料についてはIR-imaging 法を用いて、定量化を進めることにも挑戦した。現在は、検討段階ではあるが、今後IR-imaging法等を用いて、定量的な評価を実施していく。
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Strategy for Future Research Activity |
IR-imaging を用いての環境試料中マイクロプラスチックの定量評価法の確立を進めていく。また、マイクロプラスチックの長距離輸送動態の解明を進めていく。マイクロプラスチックの大気輸送では、それを特定するためにイベントごとのサンプリングとバックトラジェクトリー解析が重要であるが、九州山地の樹氷は、寒気団の到来で着氷し、過ぎ去ると脱着するのでイベントが明瞭である。したがってマイクロプラスチックの大気輸送を解明するのに優れたサンプルとなる。すでに本年も一部解析を行っており、中国大陸からの輸送を明らかにしている。
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Causes of Carryover |
環境試料中のマイクロプラスチックの検出方法の確立に時間を要したため、マイクロプラスチックの長距離輸送を明らかにするためのフィールドワークを十分に行えなかった。また、本年度は暖冬であったこともあり、計画していた、樹氷や雪を採取するための調査もタイミングの難しさから十分に行えなかった。
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[Journal Article] Risk assessment of fluoride and arsenic in groundwater and scenario analysis for reducing exposure in Inner Mongolia2020
Author(s)
Nakazawa,K., Nagafuchi, O., Otede, U., Chen, J-q., Kanefuji K., Shinozuka, K.
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Journal Title
RSC advances
Volume: 10
Pages: 18296-18304
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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