2020 Fiscal Year Research-status Report
大気中のマイクロプラスチックの存在と定量評価に関する研究
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19K22937
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
永淵 修 福岡工業大学, その他部局等, 客員教授 (30383483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 暦 福岡工業大学, 付置研究所, 研究員 (10626576) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 大気中マイクロプラスチック / 顕微ラマン分光光度計 / FTIR-イメージング / マイクロプラスチックの大気輸送 / 自由対流圏 / 樹氷 / 雪 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目の成果に基づき、2年目の研究課題は、人里離れた国立公園内の自由対流圏高度ある山岳に着氷する樹氷および雪中のMPsの存在を検証し,定量化し,その長距離輸送の実態を明らかにすることを目的とした. 予備調査として、2018年2月5日に韓国岳(1700m)の3標高で採取したサンプル(樹氷と雪)について予備的にFTIRイメージングによるマイクロプラスチック(MPs)の定量化を行った。MPsのポリマー組成を同定するため顕微フーリエ変換赤外分光光度計を用いて透過モードでマッピング測定を行った。 MPsはすべてのサンプルから検出された。ただし、今回プラスチックとしてカウントされたカルボニル系とポリアミドの2成分については、プラスチックとしての不確実性が高いため非プラスチックとした。樹氷中のMPs数は,13.4×10^3 N/ liter (1700 m)、18.2×10^3 N/liter(1640 m),25.6×10^3 N/liter(1570 m)であり、雪中では、1.34×10^3 N/ liter(1700 m)であった。樹氷中では,低標高で濃度が上昇しており、山頂の樹氷と雪では圧倒的に樹氷のほうが高濃度(10倍)であった。一方、種類別のMPsでは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ABS樹脂であった。なお、主成分は、ポリエチレンであり、その比率は、樹氷中では、81.3%から98.0%であり、雪では、80.0%であった。形状は、詳細に解析してないが既往研究と異なり,繊維より断片の方が多い傾向であった(アスペクト比が2以上のものにつき目視で繊維状のものを確認した。)。 検出されたMPsの粒径サイズは、樹氷中では、19.7~202μm(全標高)の範囲で、ほぼ100 μm以下でであった。全体的に粒子サイズが大きくなるにつれて計測数は減少した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、おもに雪・樹氷試料中 MPsの前処理方法の確立および検出方法の確立を行った。九州の山岳で標高毎のサンプリングを4回行った。そのうち2回は阿蘇くじゅう国立公園と屋久島国立公園の自由対流圏高度で同日採取を行った。採取高度は1500mから1930mまでの6高度である。サンプリングはプラスチックを排除するために、ステンレス製トング、スプーンを利用、採取ビンについてもガラス製のものを選定した。ポンプによる大気の採取には金属製のフィルターホルダ意を使用した。試料の前処理は、過酸化水素処理、ポリタングステン酸ナトリウムよる比重分離を行い、PTFEろ紙、シルバーろ紙、酸化アルミニウムろ紙(ろ紙選定のため)を用いてろ過し、その残渣を「今後の推進方策」で記述した手法でMPsを観察する準備を行っている。なお、本年度のMPsの検索と解析は市販のFTIRイメージングで行い、樹氷中と雪では樹氷のほうが10倍、単位量当たりの総数が多かく、主成分はポリエチレンであった。形状は、90%以上が断片であり、繊維状は非常に少なかった。今回、非プラスチックとしたポリアミドとカルボニル系ついては、さらに詳細な分析を行いプラスチックとしてカウントできるものを検索する。
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Strategy for Future Research Activity |
FTIR-イメージングを用いての環境試料中マイクロプラスチックの定量評価法の確立を進めていく。一方、市販のFTIR-イメージングは、非常に高価であるため国内の企業と大学で開発を進めている2次元hu-rie変換分光イメージングでの我々のフィールドサンプルへの適応を検討する。さらに、1マイクロメートルレベルへの適応についても開発を進め、ヒトの肺へ到達したMPsについても検討する。また、大気汚染物質の長距離輸送については、その通過経路、標高や速度が到達地への汚染物質の濃度と関連するが、MPsは、通過経路がほとんど海上であっても濃度が減少しない。これは、海洋表面にあるMPsが巻き上げられて大気中MPsとして存在する可能性を示唆しているが、このことについてもその起源について台風時の降水中MPsを観測することで明らかにする。台風時の降雨は、すでに調査ちを持っている沖縄北部、屋久島、九重山群、福岡市、立山、乗鞍で観測する。
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Causes of Carryover |
環境試料中のマイクロプラスチックの検出方法の確立に時間を要した。また、本年度は豪雪、コロナ禍、および、樹氷と雪の調査タイミングが合わず、十分な調査が行えなかった。
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