2020 Fiscal Year Research-status Report
バクテリアを食べるバクテリアを用いた生態系再編成:生態系機能制御への挑戦
Project/Area Number |
19K22939
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 由也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (80711291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青柳 智 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (10812761)
稲葉 知大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (90760439)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 微生物間相互作用 / 活性汚泥 / 捕食-被食相互作用 / 微生物群集形成 / 遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物は環境中では多種と混在し微生物コミュニティを形成しており、その微生物組成と生態系の機能は密接にリンクすることが明らかにされてきた。本研究では、捕食性細菌を利用して微生物組成を改変し、それによって複雑な微生物コミュニティの機能を制御することを試みる。 昨年度の研究成果によって、活性汚泥の中で実際に機能しうる、複数の捕食性細菌候補が明らかになり、入手可能なものは菌株保存期間より取得した。そこで本年度は、それら捕食性細菌を純粋培養し、活性汚泥に添加することで、実環境(複雑な微生物コミュニティ)における、実際の捕食作用の解析を行った。予想されたとおり、捕食性細菌を加えることで活性汚泥の微生物濃度は減少し、捕食現象が生じていることが確認された。さらに、これらの試料について次世代シークエンサーを用いて微生物組成の変化を解析した。その結果、加える捕食性細菌の種類によって、活性汚泥の微生物組成変化の傾向が異なることがわかった。また、活性汚泥リアクターのメタゲノムデータ解析によって、捕食性細菌の作用が生態系における微生物組成変化の速度に影響を及ぼすことが示唆された。 上記の通り興味深い成果は得られているが、本年度はコロナウィルス感染症拡大の影響により、研究計画に遅れが生じてしまった。そこで、研究計画を充分に遂行するため、ならびに、上記の新しく得られた捕食性細菌の性質に関する知見について詳細に研究を進めるため、申請当初は2年間だった研究計画を1年間延長することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、初年度に捕食性細菌の候補として特定した微生物を用い、複雑な微生物コミュニティにおける捕食性細菌の挙動やその影響の解析を進め、新しい知見を得ることができた。さらに、メタゲノムデータの解析によって、捕食性細菌の生態系における興味深い役割も明らかになりつつある。 このように成果は充分に得られてはいるが、コロナウィルス感染症拡大の影響で、研究計画の全ては遂行できず、研究期間を延長することとした。 このような経緯から、進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、基本的には当初予定していた2年度目の計画に沿って研究が遂行できた。本年度行った、捕食性細菌による、活性汚泥微生物群の捕食実験では意義ある成果が得られたため、条件を変えながら繰り返し実験を進めたい。得られたデータは過去のデータや知見とも比較検討し、捕食性細菌の性質の解明と、それを利用した微生物生態系の改変という挑戦に引き続き取り組んでいく。また、当初計画していた標識被食細菌を用いた捕食実験についても、可能な限り計画を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染症拡大の影響により、特に年度始めに実験を進めることができず、研究計画の全てを遂行することができなかった。そのため、当初2年間であった研究計画を3年間に延長し、予算残額は繰り越して使用することとした。
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