2020 Fiscal Year Research-status Report
Ultrasonic visualization of propagation of electrical excitation causing contraction by measuring human myocardial response
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19K22943
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金井 浩 東北大学, 工学研究科, 教授 (10185895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒川 元孝 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (00333865)
森 翔平 東北大学, 工学研究科, 助教 (50815149)
高瀬 圭 東北大学, 医学系研究科, 教授 (60361094)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 医用超音波計測 / 電気的興奮の伝導経路 / 心臓収縮 / 心筋応答 / 虚血状態 / 非侵襲的早期診断 / 医用超音波 / 位相差トラッキング法 |
Outline of Annual Research Achievements |
虚血性心疾患の初期段階である虚血部は,速やかに冠動脈を再灌流させることで心筋の壊死を回避できる。そのため虚血性心疾患の診断・治療では,虚血部の迅速な同定が重要となる.我々は動物実験において虚血部では心筋収縮の伝播速度が正常部に比べて低下することを超音波で計測し報告してきた。しかし心電図R波付近で,どのような現象が起きているかまでは評価されて来なかった。この現象は,心筋虚血部を検出する診断法を確立するためには必要である。そこで本年度,次の研究を行った。 まず,正常心筋と虚血心筋の速度波形を超音波計測し比較した。そのため開胸ブタ心臓の心室中隔壁に対し,約400Hzの高フレームレートでの超音波計測を行ないつつ,約3秒後に,左前下行枝を圧迫駆血することで虚血状態の中隔壁を生成し,数秒間にわたり超音波計測を継続した。それぞれの計測で取得したRF信号に位相差トラッキング法を適用し,壁内の多数点で微小振動速度を得た。13本の各ビーム上の中隔壁内の代表点における微小振動速度波形を並べ表示した。その結果を,駆血前から駆血後まで並べ,特に心電図R波周囲において現れる変化を調べた。その結果,各ビーム上の中隔壁内の代表点における微小振動速度波形において,駆血前の健常な状態において次のことがわかった。(1)心房収縮期には,中隔壁は左室側への速度成分をもつ。(2)心電図R波より約25ms前から右心室側の速度をもつ。(3)心電図R波から約25ms後から約25ms間は,左室側への速度成分をもつ(前駆出期)。(4)その後,約50ms間,収縮を休むように,右心室側の成分をもつ。(5)その後,本格的な収縮が始まり,左心室側への速度をもつ。一方,駆血後の虚血部における大きな変化は,上記(3)の前駆出期での左室側への速度成分の継続時間が,2倍近く伸長している。それに伴って上記(4)(5)の期間も後方へ移動している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電気的興奮自体は超音波では計測できないが,前駆出期に心筋がピクッと動く様子を超音波で計測することで収縮伝播を描出した。さらに,正常心筋に対し虚血心筋において前駆出期の伸長が確認され,心筋虚血部の非侵襲的な同定の可能性を示した。 このように今年度予定していた,電気的興奮の到来直後に心筋が動く現象の計測を生体計測に拡張し,電気的興奮到来への心筋の応答の「伝搬速度と応答性」の可視化手法の研究開発をほぼ終えた。そのため,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,超音波ビーム走査のさらなる高密度化(すなわち,低フレームレート化)に対応するために,新たな手法の開発を継続する予定である。そのため,複数の異なる超音波位相差を用いるなどして,さらなる安定な速度推定法を開発する。この手法を用いた心筋速度波形計測では,従来法では計測できなかった収縮層と弛緩層の多層状の分布が得られる可能性があり,この手法を用いた心筋計測によって,心臓壁の局所心筋収縮特性と電気機械的特性の関係を明らかにすることが期待でき,画期的な成果につながる。 その後,提案方法を,健常者と虚血疾患患者へ適用し,臨床上有意義で新しい診断情報が取得可能なことを示し,さらに電気的興奮への応答が伝搬する現象を解明する。 さらに提案法を,様々な病態・患者に臨床応用することで,心疾患との対応を体系的に解明し,心臓生理学,循環器病学などの学問分野に貢献できる。
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Research Products
(15 results)