2019 Fiscal Year Research-status Report
組織幹細胞由来の胚子様構造体から得た各種原基の採取・保存法
Project/Area Number |
19K22946
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
沖 明典 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60334067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 博 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (30089784)
丸島 愛樹 筑波大学, 医学医療系, 講師 (40722525)
松丸 祐司 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70323300)
豊村 順子 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (80645630)
松村 明 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241819)
大山 晃弘 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (90538232)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 歯髄幹細胞 / 胚子様構造体 / 各種の器官・臓器 / 再生医療のための細胞源 / 細胞保存法 / 糖尿病 / 脳梗塞 / 心筋梗塞 |
Outline of Annual Research Achievements |
iPS細胞やES細胞を細胞源とする再生医療では、移植後の腫瘍化の問題がまだ十分に回避されていない。腫瘍化の問題を根本的に避けるためには、組織幹細胞を細胞源とする再生医療が考えられる。しかし、機能不全に陥った器官・臓器の機能を再生医療で回復させる場合、幹細胞から分化誘導した細胞のフェノタイプの安定性、核型の正常性、移植後の細胞の活着と機能維持等が求められる。しかし現状では、まだこれらの問題を克服した分化誘導細胞が得られていないのが現状である。例えば幹細胞から分化誘導した細胞は誘導物質の存在下でのみ獲得したフェノタイプが維持され、誘導物質を除くとフェノタイプが消失することが多い。さらに機能不全に陥っている器官・臓器は1種類の細胞で構成されているわけではなく多くの種類の細胞で構成されている。しかし幹細胞から器官・臓器を構成細胞するすべての細胞を一度に分化誘導することは不可能である。これらの問題を解決するため、我々は全く新しい細胞源を提案したい。すなわち組織幹細胞から胚子様構造体を成育させ、そこに存在する各種の器官・臓器の原基を再生医療の細胞源とするものである。もしこれに成功すれば、正常2倍体性の高い、フェノタイプの安定した、器官・臓器を構成する細胞をone set持った細胞源を得ることができる。これを使用すれば、各構成細胞がパラクリン的に働いて十分な機能の回復が図れると考えた。そこで予備実験として幹細胞が多いヒトの歯髄から幹細胞を分離し、これから胚子様構造体を育成した。構造体の内部には種々の器官・臓器の原基(神経管、肝臓原基、膵臓原基(ラ島を含む)、心臓原基、肺原基、消化管原基等)が存在していた。これら構成細胞を増殖させバンクで保存し必要に応じて解凍して使用すれば、質の高い全く新しい再生医療を提供することができると考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験では、歯髄幹細胞から作製した胚子様構造体から採取される器官・臓器には、神経管(中枢神経の原基)、肝臓原基、膵臓原基(ラ島を含む)、心臓原基(弁膜、刺激電動系を含む)、皮膚原基(毛嚢を含む)、消化管原基、呼吸器原基、網膜原基(神経細胞層、色素上皮層を含む)、胎児性骨・軟骨(軟骨内骨化を認む)、歯胚等を認めた。これら原基は、皆高い正常2倍体性を維持していることが判明した。さらに各器官・臓器を構成する細胞がone set存在していることを確認した。歯髄幹細胞から胚葉体構造体を成育させるための培養液はDMEM/F12を基本培地とし、これに添加するEmbGFを作製した(特許準備中)。還流培養で胚葉体から胚子様構造体を成育させる際、胚様体がローズのチャンバーの内壁に接着すると心拍動する3胚葉性の胚子様構造体の成育確立が低下する。これを避けるために還流する培養液の速度(流速)を、生育状態(胚子様構造体の大きさ)によって変化させることが必須であった。現在、胚子様構造体から採取した各種器官・臓器をそのままの状態で、また消化酵素で液体窒素に保存する条件を検討している。再生医療では通常、細胞を保存するために使用するDMSOは使用できないので、DMSO freeのクライオスカーレスを用いて検討しているが、独自に作成するための実験も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
胚子様構造体から採取する器官・臓器のうち、(1)神経管を脳梗塞モデル動物に移植し機能回復を評価する。また、通常法で死蔵から分化誘導した神経系細胞を移植したものと機能回復度を比較評価する。(2)液体窒素に保存した神経管細胞を脳梗塞モデル動物に移植し機能回復を評価する。(3)神経管由来のマイクログリアを用いて多発性硬化症の研究を行う。(4)胚子様構造体から採取したラ島を形態的・機能的に解析する。ラ島には少なくともα細胞、β細胞、γ細胞が存在していた。予備実験では糖尿病モデル動物の腎被膜下に移植し、120日間血糖値の低下を観察できた。糖尿病の専門医と共同研究して研究を進める。(5)胚子様構造体から拍動する心臓原基を採取し、心筋シート、あるいは心筋構成細胞を心筋梗塞モデル動物に移植し、機能回復を評価する。また、刺激電動系細胞を用いた実験を進めるため専門の先生方と共同研究する。 胚子様構造から採取される各種器官・臓器の原基を凍結保存する方法を確立する。凍結保存液を開発し、バンクを設立するためPMDAとの相談を開始する。それぞれの器官・臓器を専門の研究者に提供し、バンク事業に参画していただく。
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Causes of Carryover |
胚子様構造物から得られた各種の器官・臓器のフェノタイプの安定性(免疫染色で検査)、正常二倍体性の検査が遅れている。そのため、免疫不全動物あるいは機能不全モデル動物への移植、移植後の機能維持については2020年度にずれ込んでしまった。これらの実験で使用予定であった各種抗体費用、免疫不全動物や各種機能不全モデル動物の購入飼育費が次年度の使用となった。
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