2019 Fiscal Year Research-status Report
血流刺激に反応する血管内皮ミトコンドリアのバイオエナジェティクス
Project/Area Number |
19K22952
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 希美子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (00323618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 譲二 獨協医科大学, 医学部, 特任教授 (20159528)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / ATP / ミトコンドリア / 流れせん断応力 / メカノトランスダクション |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞や組織が環境に由来する力学刺激を感知して反応することは、その機能や生存にとって極めて重要な役割を果たしている。しかし、力学刺激を感知する仕組みは十分解明されていない。本研究では血管内皮細胞が血流に起因する流れ剪断応力を感知して情報伝達する分子機構を新しい視点、即ち、ミトコンドリアに焦点を当てた解析を行う。そこで本年度は「力学的刺激に伴うミトコンドリアATP産生の解析」についての課題を中心に実験を行い、以下の結果を得た。 流れ剪断応力の強さを細胞内カルシウム濃度に変換する分子であるATP作動性チャネルP2X4は流れ剪断応力依存的に細胞内から放出される内因性ATPにより活性化され、血圧の調節を含む循環生理の恒常性維持に重要な役割を果たしているが、流れ剪断応力に伴うATP放出機構の詳細は明らかではなかった。ミトコンドリア標的型のfluorescence resonance energy transfer (FRET)-based ATPバイオセンサーのアデノウイルスベクターを感染させた培養ヒト肺動脈内皮細胞に流れ剪断応力を負荷すると、ミトコンドリア内のATP濃度が瞬時に上昇し、流れ剪断応力を停止すると、初期のレベルまで戻った結果から、流れ剪断応力により、ミトコンドリアでATPが産生されていると考えられる。流れ剪断応力の反復刺激に対し、ミトコンドリアATPの濃度が上昇し、可逆性を示した。また、ミトコンドリアATPの濃度は静水圧に対しては変化が認められないが、同じ細胞に流れ剪断応力を負荷すると、瞬時に上昇することから、ATP産生には流れ剪断応力に特異性があると考えられる。さらに、流れ剪断応力のレベルを段階的に大きくすると、ミトコンドリアATPの濃度も段階的に増大することから、流れ剪断応力の大きさに依存的にミトコンドリアにおいてATPが産生されることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的を達成するために、期間全体として以下の3項目の研究を計画している。 1)力学的刺激に伴うミトコンドリアATP産生の解析 2)ミトコンドリアの立体構造と細胞形質膜ミクロドメインの構造解析 3)ミトコンドリアの役割を介したメカノトランスダクションと細胞応答 本年度は1)力学的刺激に伴うミトコンドリアATP産生の解析の項目を明らかにすることができたことに加え、2)と3)の項目についての予備的な検討を終了することができた為。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には、研究目的と計画に沿って、具体的に、以下の項目を推進する。 2)ミトコンドリアの立体構造と細胞形質膜ミクロドメインの構造解析 2-1)ミトコンドリアと細胞形質膜の立体構造の解析:細胞形質膜、脂質ミクロドメイン・カベオラとミトコンドリア膜の立体構造の相関について、超解像蛍光顕微鏡観察と透過型電子顕微鏡観察により明らかにする。2-2)ミトコンドリアATPが細胞外へ放出される機構の解明:ATPが通過することの可能なヘミチャネルであるコネキシンのサブタイプの発現をリアルタイムPCR、ウエスタンブロッティング法により決定し、免疫蛍光染色法と金微粒子を用いた免疫電顕法で、ミトコンドリア膜とカベオラ膜との間の構造を解析する。siRNAを用いてコネキシンの発現を抑制した際のATP産生とATP放出を計測することで、ヘミチャネルとしての機能を解析する。 3)ミトコンドリアの役割を介したメカノトランスダクションと細胞応答 3-1)ミトコンドリア膜電位と酸素消費量の測定:培養ヒト内皮細胞にミトコンドリア膜電位と酸素消費量の測定のそれぞれの蛍光プローブであるJC-1とMitoXpress Intraを導入し、力学的刺激下での蛍光強度の変化をリアルタイムイメージングする事により計測する。また、活性酸素種(ROS)を蛍光指示薬CellROXとH2-DCFを用いて解析する。3-2)ATP産生に伴うCa2+シグナリングの解析:ミトコンドリアATPプローブを発現した培養内皮細胞にCa2+指示薬のIndo-1を負荷する。Shear stressとstretchを加えた時のATP産生とATP放出、Ca2+シグナリングを同時にイメージングする事により、Ca2+シグナリングの発火点とミトコンドリアでのATP産生との相関を明らかにし、メカノトランスダクション機構に果たすミトコンドリアの役割について解析を加える。
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[Journal Article] Two diverse hemodynamic forces, a mechanical stretch and a high wall shear stress, determine intracranial aneurysm formation.2020
Author(s)
H. Koseki, H. Miyata, S. Shimo, N. Ohno, K. Mifune, K. Shimano, K. Yamamoto, K. Nozaki, H. Kasuya, S. Narumiya, T. Aoki.
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Journal Title
Transl. Stroke Res.
Volume: 11
Pages: 80-92
DOI
Peer Reviewed
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