2023 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類と異なる戦略で優れた心機能を発揮する鳥類に学ぶ革新的心不全治療の創出
Project/Area Number |
19K22962
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
氏原 嘉洋 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80610021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛利 聡 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00294413)
中村 匡徳 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20448046)
西辻 光希 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (60770823)
花島 章 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70572981)
橋本 謙 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (80341080)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 鳥類 / 心臓 / 心筋細胞 / カルシウム / ウズラ |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓のポンプ機能(心機能)は,心筋細胞の緻密なCa2+管理による効率的な収縮・弛緩に支えられている.重篤な心不全では,T管膜が崩壊することが知られているが,その根本的な対策は未だ見つかっていない. 鳥類は,哺乳類と同等以上の高い心機能を有している.しかし驚くべきことに,哺乳類に必須であるT管膜が鳥類の心筋細胞には存在せず,鳥類には独自の驚くべきシステムが存在することが予想される.本研究では,鳥類がT管膜なしでも高い心機能を発揮する仕組みを明らかにすることを目的とし,T管膜の崩壊した重篤な心不全に対する革新的な治療戦略の創出に貢献することを目指した. これまでに,鳥類のウズラ(成体)と哺乳類のラット(成体)の単離心筋細胞のCa2+濃度変化を解析し,鳥類は優れたCa2+排出能力を獲得することで,迅速なCa2+濃度変化を実現していることを明らかにしてきた.コロナウイルス感染の流行により大幅に研究が遅れていたため,本年度はこれまでの成果を論文としてまとめるとともに,新たにウズラ胚由来培養心筋細胞の解析を行った.孵卵10日前後のウズラから心筋細胞を単離し,静置培養したところ,Ca2+の上昇時間,下降時間ともに,ウズラの成体に匹敵する値を示した.一方,ラットの新生児から単離した心筋細胞においては,同程度の期間培養しても成体ほどにはCa2+管理能力は発達しなかった.以上より,鳥類の心筋細胞は,哺乳類よりも培養条件下で高い心機能を獲得する可能性が示唆された. これらの成果は、T管膜がなくても迅速なCa2+濃度変化が可能であることを示しており,T管膜が崩壊しても心機能を維持できる可能性を示唆している.この知見は,重篤な心不全において壊れたT管膜を補完する新しい治療戦略の開発に寄与する可能性があり,T管膜に頼らない心筋細胞の機能回復を目指した革新的なアプローチの創出に繋がることが期待される.
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Research Products
(6 results)