2019 Fiscal Year Research-status Report
A construction of new biosensor technology enabling highly sensitive detection of alpha-synuclein fibril originated from Parkinson's disease patient
Project/Area Number |
19K22964
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
野田 実 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (20294168)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山門 穂高 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (10378771)
島内 寿徳 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (10335383)
寒川 雅之 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70403128)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
Keywords | パーキンソン病 / αシヌクレイン / リポソーム / 脂質膜 / カンチレバーセンサ / フィブリル / オリゴマー / モノマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者が研究、開発してきたリポソーム固定化カンチレバーセンサ技術とRT-QuIC法という異常凝集タンパク質(aSyn)増幅技術を組み合わせて、aSyn凝集体の特異的かつ超高感度な検出の可能性を探索することを目的とする。今まで申請者はaSynフィブリル自体は10 nMオーダーまで高感度検出できているが、臨床医学では数十fMレベルの感度での特異的検出が必要である。臨床医学での現使用技術では感度自体、特に再現性の点で能力不足で実用レベル技術は現在無い。 本現況に対して本年度実施した研究では新たなバイオプロトコルとして、「その微量フィブリルのモノマーへの自己鋳型化現象」がリポソーム等の本分子系で発現するかを検討した。比較的高濃度であるμMオーダーのaSynモノマー溶液に極微量、例えば百fMオーダーのフィブリルを添加した場合、自己鋳型化による増幅現象を本センサで検出できるか実験、確認した。その結果、約700fMのフィブリルを数時間で検出できた。この結果は非常に画期的であり、臨床医学側からのパーキンソン病患者、患者予備軍の方々から生体液、主に髄液中で、他のタンパク質等バイオ分子夾雑物からのaSynフィブリルを特異的に検出する次のステージに進めることができた。 一方本研究を構成する基礎技術の研究成果として、脂質技術として従来のゲル相と異なり液晶相DOPCを用いた結果、高いaSyn検出感度を得た。また糖脂質C16, C18修飾で検出感度増大を確認し糖脂質の相分離によるaSyn-糖脂質間相互作用が多点結合と推定できた。基盤センサ技術となるカンチレバーセンサで応力検出の根幹となる応力集中箇所にひずみ抵抗を形成、設計、試作した結果、荷重印加によるひずみ抵抗変化で従来の20倍程度の感度向上を達成することができた。このセンサ基礎性能の向上により上記からさらなる高感度検出が可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度分研究計画調書記載の1.バイオセンシング分子技術(H31-)では、1)、2)脂質膜種、糖鎖修飾によるaSyn検出感度向上を、2.カンチレバーセンサ技術(H31-)では、応力集中構造パターンの考察と作製を、そして3.低濃度aSyn線維化後の評価(H31-)を行った。 1.バイオセンシング分子技術、3.低濃度aSyn線維化後の評価について、他者従来研究成果として参考するRT-QuIC法というパーキンソン病原因物質αシヌクレイン(aSyn)の微量検出手法(バイオプロトコル)で必須であった数万回の強制振動、非常に長くかかる検出時間(1日以上)という問題点で、強制振動ほぼ無し、短い検出時間(3時間程度)という画期的な特性を、バイオセンシング分子技術の観点で得られたので、それを主に進めた。結果、我々独自の手法である、センサ上の脂質膜を相互作用の場とするとaSynの凝集、線維化が非常に促進される可能性が高く、検出時間が大幅に短縮できることが示唆された。一方臨床医学的には、人の生体液中極微量aSynフィブリル検出が最も重要であるため、新たなバイオプロトコルとして、「その微量フィブリルのモノマーへの自己鋳型化現象」がリポソーム等本分子系で発現するかを検討した。比較的高濃度であるμMオーダーのaSynモノマー溶液に極低濃度、例えば百fMオーダーのフィブリルを添加した場合、自己鋳型化による増幅現象を本センサで検出できるか実験、確認した結果、約700fMのフィブリルを数時間で検出できた。 一方、従来のゲル相と異なる液晶相DOPCの利用、糖脂質C16, C18のリポソーム表面修飾により、aSyn検出感度増大を確認でき、2.カンチレバーセンサ技術では、応力集中箇所にひずみ抵抗を形成するように新たに設計、試作を行い、荷重印加によるひずみ抵抗変化を評価した結果、従来の20倍程度の感度向上を達成できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の進捗にて、本研究の主要目的であるaSyn凝集体の超高感度検出の技術的目処が見えてきた。主要なバイオセンシング技術としては、測定溶液中に比較的高濃度μMオーダーの合成aSynモノマーを用意してそこにターゲットとなる極微量aSynオリゴマー等フィブリルを導入して検出する。また脂質技術としては、液晶相の適用が現実的か検討する以外に、本年度確認された検出感度の増大が脂質膜に添加されるコレステロールや糖脂質C16, C18の濃度に対して単調に依存するのか、母体である脂質の種類にも依存するのか、そしてある濃度を閾値として検出感度の特異的増大が見られるのかを検討する。そして脂質混合組成の相分離特性を明らかにする。相分離性が確認された場合、aSynと相分離性脂質膜の相互作用機構も検討する。基盤センサ技術としては新規応力集中場歪抵抗形成カンチレバーセンサを用い基本検出感度を1桁以上向上させる。 現時点ではターゲット分子として合成aSynフィブリルを極低濃度に濃度調整して導入した実験だが、臨床医学側からのパーキンソン病患者、患者予備軍の方々から生体液、主に髄液、さらには血液、を提供いただき、他のタンパク質等バイオ分子夾雑物からの特異的検出にステージを上げていく。本研究で新たに適用している「aSynフィブリルの同モノマーへの自己鋳型化現象」は特異的現象であり、ターゲット分子を他の類似タンパク質、例えばアミロイドβ等からも選択的検出できる。一方、これら実験結果が先行している状況の中で、発現している現象の分析、解析と考察を、挑戦的研究(萌芽)の本質的な成果の獲得として進めていく。
|
Causes of Carryover |
1)2020.3月の学会発表旅費、学生含め計3名の使用予定、2)同2、3月での学外機関での測定装置使用費の使用予定、ならびに3)購入予定消耗品の消耗品費の使用予定が、新型コロナウィルスのために使用不可能になってしまったため。 研究自体は順調に成果が出てきており、次年度には上記装置使用ならびに購入が遅れた消耗品の購入を進め、全体計画が遅れないように研究作業内容を進める。
|
Research Products
(7 results)