2019 Fiscal Year Research-status Report
光治療におけるコンピュテーショナル臨床試験基盤の創出
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19K22966
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
粟津 邦男 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30324817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 隆宏 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10722829)
間 久直 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70437375)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | レギュラトリーサイエンス / レーザー治療 / 医療機器 / in silco試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,コンピュテーショナル臨床試験の一例として,形成外科・皮膚科治療において今後適用拡大が期待される新規超短パルスレーザーを評価する.一連の治療プロセスを計算する光治療シミュレータを実装し,本手法の妥当性・有効性を明らかにすることを目的としている.本年度は光治療シミュレータに重要となる,1. 各皮膚組織の光学特性値の計測を行うとともに,原理実証として皮膚良性色素疾患治療用ナノ秒パルスレーザー装置を用いた治療に対する安全性の計算機臨床試験を行った. 1. 各皮膚組織の光学特性値の計測 双積分球光学系により試料の拡散反射率と総透過率を測定し,逆モンテカルロ法を用いて,波長400~1100 nmにおける吸収係数および換算散乱係数を計測した.試料には手術の際に生じた残余皮膚組織を用いた(大阪大学医学部附属病院観察研究倫理審査委員会 承認番号: R人29).表皮,真皮,皮下脂肪の光学特性値を用いることにより,多層皮膚モデルの組織内の光伝搬分布計算が可能になった. 2. 皮膚良性色素疾患治療用ナノ秒パルスレーザー装置の安全性評価 ナノ秒パ ルスレーザー照射における熱損傷過程をモデル化し,熱損傷体積を数値シミュレーションにより求めた.正常皮膚組織へパルス光照射した際の温度上昇と熱損傷体積を安全性の指標として,既承認機器Aに対して,既承認機器Bを承認申請機器と仮定して,その安全性を評価した.既承認機器における穏和条件と承認申請機器における過酷条件の熱損傷を計算機シミュレーションにより比較し,両機器の安全性が同等であると結論づけた.今回対象とした機器は実際に承認されており,本計算機臨床試験の示す結果と同じであった.今後,他既承認機器における臨床研究結果と計算機臨床試験とによる評価を比較し,医療機器評価手法として展開する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
必要な物理パラメータの取得が完了するとともに,簡易ではあるが提案手法の医療機器審査における可能性を示す結果を得たため.
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Strategy for Future Research Activity |
1. 光治療シミュレータの妥当性評価 サンプルやヒト切除サンプルを用いた ex vivo実験により,実際に皮膚組織へレーザー光照射した結果と,光治療シミュレータにより提示される皮膚損傷分布を比較する.皮膚組織の構造や光学特性値のサンプル間のばらつきやその他モデル化が困難な事象に関しては,ex vivo実験結果を活用したデータ同化や機械学習などの計算科学的 手法の導入により光治療シミュレータの精度向上を図る. 2. コンピュテーショナル臨床試験法の実証 論文にて公開されている臨床研究データと,光治療シミュレータにより生成したコンピュテーショナル臨床結果を,熱・応力損傷や対象領域の温度変化などの観点から比較評価する.新規レーザー機器に対して,既承認機器との比較評価手法を確立し, 臨床試験における安全性・有効性評価が計算機上で完結することを実証する.
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Causes of Carryover |
計算環境の整備が遅れ,それに伴い,当初予定していた光治療シミュレータの妥当性評価実験の準備が遅れたため.評価実験に必要となるレーザー光源,光学部品に使用する予定である.
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Research Products
(6 results)