2019 Fiscal Year Research-status Report
ナノ粒子が誘起する局所膜電位増強で細胞膜にナノスケールの孔をあける挑戦
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19K22976
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
仲村 英也 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00584426)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞膜透過 / 細胞内導入 / ナノ粒子 / 細胞膜 / ナノバイオ界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞にダメージを与えずに、細胞の中に化合物を効率よく送達できれば、究極の細胞内送達手法となる。本研究では、申請者が最近見出した「ナノ粒子が誘起する局所膜電位増強によって細胞膜にナノ細孔があく」新奇な現象に焦点を当て、究極の低侵襲送達手法の萌芽に挑戦する。令和元年度は、平面脂質膜法を利用した実験による検討を実施した。具体的な研究実績は次の通りである。
はじめに、平面状のリン脂質二重膜(人工細胞膜)を作製し、これを送達化合物が透過する現象を評価できる実験系を構築した。具体的にはW/O型油中水滴を接触させて、2つの水滴の接触界面でリン脂質二重膜(人工細胞膜)を形成できるマルチウェルデバイスを独自に作製した。埋め込み電極を接続し、所定の膜電位を印可した。モデル送達化合物として、分子量3000~5000 の蛍光標識デキストランを用いた。また、ナノ粒子には粒子径数十nmの正帯電性ポリマーナノ粒子を用いた。水滴中のデキストラン濃度は超微量分光光度計(購入品)で測定し、膜を透過した量を定量した。
種々の検討の結果、ナノ粒子の添加によって膜破壊電位の30%以下の微弱な印可電位でもデキストラン(モデル送達化合物)が人工細胞膜を透過することが分かった。さらに、形成された脂質膜の状態を示す膜容量を電位印加前後で測定したところ、膜容量はほとんど変化していないことから、電位の印加前後で膜の質は同等であることが確認できた。以上のことから、低侵襲な物質の膜透過が起こることが実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画段階で最も挑戦的な課題であると予想していた、人工細胞膜実験によるモデル送達物質の細胞膜透過現象の検証を進めることができ、目標としていた送達物質の細胞膜透過を確認することができた。実験検証を予定よりも早く終えることができたため、次年度の研究に用いる実験試薬の選定・キャラクタリゼーションを前倒しで実施することができ、次年度の実験研究に向けた準備を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ナノ粒子の物性が送達化合物の膜透過現象に及ぼす影響を実験で解析する。さらに、種々の大きさを持つ送達化合物を用いた実験も実施する。これにより、本研究の送達手法を、より低侵襲で、かつ、幅広いサイズの送達化合物にも適用できるようにする。並行して、分子動力学(MD)シミュレーションによる理論解析も実施し、膜穿孔現象が起こる本質的機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2019年度の購入物品(超微量分光光度計)について新製品がリリースされており、必要な性能を持つ装置を予定よりも低予算で調達することができたため、次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、実験に必要な消耗品の購入に充てることを計画している。
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Research Products
(8 results)