2020 Fiscal Year Research-status Report
分子種識別トモグラフィを実現する非弾性散乱光干渉断層画像計の開発
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19K22979
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
由井 宏治 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 教授 (20313017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦島 周平 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 助教 (30733224)
森作 俊紀 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 助教 (00468521) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 光散乱 / 光音響 / 光干渉 / 顕微鏡 / レオロジー / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
食品・医薬品・化粧品をはじめ、細胞や生体組織まで及ぶ濃厚コロイド分散系試料における粘弾性の時空間分布を計測できる手法を開拓する。具体的には光散乱と音響信号を高度に組み合わせて、深さ方向分布や、深さ方向に不均一分布のある凹凸表面において動的に濡れ広がる系に適用する。2020年度は、前年度に引き続き深部の粘弾性計測、並びに、凹凸表面における濡れ広がりの時間変化に対応すべく、光音響効果の応用と、光散乱光の自己相関解析から、それぞれ到達深度、時間分解能を拡張した。 光散乱性の強い生体組織では、1mmを超える深部では、光そのものが仮に目的部位まで到達しても、光の多重散乱により、受信する光散乱のコヒーレント性が埋もれてしまい信号の質が大幅に低下してしまう。そこで送信は光で空間位置選択性を出し、受信は超音波の波形で粘弾性情報を抽出する方法を試み、その信号の取得・粘弾性情報の解析に成功した。また、皮膚などの深さ方向に表面凹凸のある基板の上を濡れ広がるスラリーに対して、光散乱光の自己相関解析を導入することで、濡れ広がり時の乾燥に伴い、スラリーの粘弾性が場所に応じて変化していく様子を捉えることにも成功し、深さ方向への拡張だけでなく、時間変化も追跡できるように、計測装置を拡張した。 肝硬変など病理の進行に伴い、組織や細胞の堅さ・柔らかさが変化してくものは数多い。深さ方向における粘弾性計測が可能になることで、病理的に粘弾性が変化する組織の早期診断が可能になる、また工業製品においては、濃厚コロイド分散系からなる機能性塗膜などのコーティングや、医薬品の塗布の際に重要となる、凹凸表面上における濡れ広がりに対して、乾燥等で時々刻々変化する粘弾性を計測できるようになれば、効率的な均一塗布を目指した材料設計、ならびに、少ない塗布量での機能維持・高効率化などに繋がる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
装置開発という観点では研究は概ね順調に推移し、研究成果を論文などに発表することができた。一方で、Covid-19による教職員・学生の1/2から1/3への来校制限、実験室における3密防止、県境をまたいでの移動制限等により、他医学系大学における研究者との共同・連携による生体組織ファントムの作成ならびにイメージング計測は、研究期間を2021年度に延長しての対応となった。
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Strategy for Future Research Activity |
光散乱と音響信号を駆使しての粘弾性信号取得のための装置開発ならびに計測はおおむね順調に進行したが、波及効果という観点からは、より実際の試料に近い系での計測データーの積み重ねが重要になると考えている。既に皮膚を模した表面凹凸試料における濃厚コロイド分散系の粘弾性変化の計測には成功しているが、特に医療系への応用を考えた際は、深さ方向に粘弾性の異なる組織が多層積まれたような試料における計測が望まれる。そこで、医学部の研究者と連携・協力しながら、実際の組織形態を模擬したファントム試料で、用いる光散乱の波数域や音響信号の帯域などの最適化を通じて、より実践へ向けた開発した装置の改良を施していきたい。
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Causes of Carryover |
医学部の研究者と連携・協力による、実際の組織形態を模擬したファントム試料による計測は、研究期間を2021年度に延長しての実施となった。2021年度では、実際の組織形態を模擬したファントム試料の作成のための試薬購入、また、実際の組織への応用に適した落射型の光学配置への変換のための光学部品の購入、MHz-GHz帯域の信号シフトの受信のための電子部品の購入等に予算の使用を予定している。
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